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坪井, 清孝
出版情報: 新潟医学会雑誌 — 新潟医学会雑誌.  124  pp.627-637,  2010-11.  新潟医学会
本文リンク: http://hdl.handle.net/10191/28867
概要: 食道扇平上皮癌は異形成 (dysplasia) と呼ばれる異型扇平上皮を前癌病変とし, それが上皮内癌 (carcinoma in situ: CIS) を経て浸潤癌に進行すると考えられている. Dysplasiaは軽(low-grade dysplasia: LGD) と高度 (high-grade dysplasia: HGD) に大別されるが, そのいずれが, 食道扇平上皮の発癌早期段階かは明らかではない. このことを明らかにするため, 本研究では, 食道扁平上皮癌で高頻度にみられるp53遺伝子異常に着目し, 扁平上皮癌とそれに併存する上皮内腫瘍 (LGD, HGD, CIS) のp53遺伝子変異および同蛋白過剰発現を検討した. 内視鏡的摘除ホルマリン固定食道扇平上皮癌10例 (粘膜固有層浸潤癌: M癌4例, 粘膜下層浸潤癌: SM癌6例) を対象とし, LGD, HGD, CIS, M癌部, SM癌群別にp53免疫染色を評価し, それぞれの領域からマイクロダイセクションによりDNAを抽出し, p53遺伝子のエクソン5~8をPCRで増幅し, シークエンス解析により同遺伝子変異を検索した. p53遺伝子変異はLGDの83.3%, HGDの50.0%, CISの71.4%, 浸潤癌部の50.0-75.0%に認められた. LGDとHGDでは, 1例を除き, 同一病変内に併存するCISおよび浸潤癌部と変異コドンが共通するか, もしくは両者とも wild-type であった. これらのことから,p53遺伝子変異の観点からみた限りは, LGDおよびHGDは同一病変内のCISや浸潤癌部と組織発生学的連続性があることが推定された. 同一病変内のCISと浸潤癌部では遺伝子変異は単一の変異コドンに生じていたが, LGDとHGDでは変異コドンに多様性 (複数の変異コドンが存在) がみられた. LGDとHGDは異なるp53遺伝子変異を持つ複数の細胞集団から構成され, それらがクローン選択を経て均一なp53遺伝子変異パタ-ンを持つCISとなり, 粘膜固有層へ浸潤すると考えられた. 本研究結果から, LGDの段階で既にCISや浸潤癌と共通するp53遺伝子変異を来した細胞集団が含まれていることが推定され, LGDを食道偏平上皮の発癌早期段階として位置づけることが可能であり, LGDに対しては積極的な臨床対応が必要と考えられた. 続きを見る
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松澤, 岳晃
出版情報: 新潟医学会雑誌 — 新潟医学会雑誌.  122  pp.619-625,  2008-11.  新潟医学会
本文リンク: http://hdl.handle.net/10191/28137
概要: 大腸粘膜内癌にはリンパ節転移例の報告はなく, 大腸粘膜内癌にはリンパ節転移能がないと考えられてきた. しかし従来の大腸粘膜内癌リンパ節転移に関する検索は, HE染色標本のみを元に行われたものであり, 免疫組織学的に同定されるりンパ節微小転移 (isolated tumor cell: ITC)の有無については検討されていない. 本研究は, リンパ節郭清を伴う外科切除が施行され, 病変の全割切片による組織学的検索が行われた大腸粘膜内癌36例を対象に, 上皮性サイトケラチンCAM5.2免疫染色によりリンパ節ITCを検索し, ITCと原発巣粘膜内癌の組織学的因子との関連を検討した. 原発巣大腸粘膜内癌は全例が分化型(高分化・中分化)腺癌で, リンパ管侵襲・静脈侵襲, 蔟出のリンパ節転移リスク因子は陰性であり, 対象とした557個のリンパ節全てにITCは認められなかった. 以上のことから, 大腸粘膜内癌では免疫組織学的に同定されるITCすら存在せず, リンパ節転移能のない癌である可能性が高いことが再確認された. 大腸粘膜内癌では, 原発巣にリンパ節転移形成過程の第一段階である蔟出形成がなく, そのことがリンパ節転移が生じない主要因として推定された. 続きを見る
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橋本, 哲
出版情報: 新潟医学会雑誌 — 新潟医学会雑誌.  120  pp.569-576,  2006-10.  新潟医学会
本文リンク: http://hdl.handle.net/10191/19934
概要: 大腸sm癌発育先進部の蔟出(sprouting/budding)のリンパ節転移危険因子としての意義については,研究者によって意見の一致がえられていない.このことは,通常のHE染色標本のみでは,蔟出,脈管侵襲,リンパ節転移の同定精度が必ずしも 高くないことに起因している.本研究は,リンパ節郭清がなされた外科切除大腸sm癌88例を対象として,上皮性サイトケラチンCAM5.2免疫染色で蔟出を,同免疫染色およびHE標本でリンパ節転移を,Victoria blue弾性線維染色で静脈侵襲を,リンパ管内皮細胞マーカーD2-40免疫染色でリンパ管侵襲を,検索し,病変ごとの蔟出平均個数・最大個数と,脈管侵襲,リンパ節転移との相関を検討した.リンパ管侵襲陽性例とリンパ節転移陽性例は,それぞれの陰性例に比べ,蔟出平均個数,最大個数ともに有意に高値であった.また,最大個数として11個以上の蔟出を認める症例はそれ未満に比べ,リンパ節転移陽性率が有意に高かった.これらのことから,大腸sm癌の蔟出は,リンパ節転移危険因子としての意義があり,EMR大腸sm癌の追加腸切除考慮条件のひとつになりうる可能性が示唆された. 続きを見る
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小川, 洋 ; 若井, 俊文
出版情報: 新潟医学会雑誌 — 新潟医学会雑誌.  129  pp.59-70,  2015-02.  新潟医学会
本文リンク: http://hdl.handle.net/10191/44022
概要: 【緒言】膵癌の上皮内癌から浸潤性膵管癌への進行過程において, ムチン免疫組織化学およびCD10を用いた粘液形質の解析を行った報告はほとんどない. 本研究の目的は, 外科切除された浸潤性膵管癌を対象として, 膵癌の進行過程における粘液形質変化 を解明することである. 【方法】上皮内癌部を含む浸潤性膵管癌41例を対象とし, MUC1, MUC2, HGM, MUC5AC, MUC6, M-GGMC-1, CD10, CDX2の免疫組織化学を行い, 上皮内癌部と浸潤癌部における粘液形質を比較し, 癌の進行過程での粘液形質変化を検討した. 【結果】膵癌症例においてMUC1および胃腺窩上皮型のHGM, MUC5ACは, 各々100%, 93%, 81%と高頻度に発現しており, 上皮内癌部では95%, 95%, 81%, 浸潤癌部では98%, 88%, 68%であり, どちらも高頻度に発現していた. 一方, CD10やMUC2は浸潤癌部, 上皮内癌部をとも低頻度であった. M-GGMC-1, MUC6は, 各々18%, 17%に発現し, 上皮内癌部では各々41%, 34%に発現していたのに対し, 浸潤癌部では各々6%, 7%と低頻度であった. 粘液形質により分類すると, 上皮内癌部においては, 胃腺窩上皮幽門腺型(FG型)が20例と最も多く見られ, そのうち14例は浸潤癌部で胃腺窩上皮型(F型)を示した. また, 上皮内癌部において胃腺窩上皮型(F型)は15例に見られ, 浸潤癌部も14例は同じ粘液形質であった. 浸潤癌部では, 胃腺窩上皮腸型(F-I型), 膵胃腺窩上皮型(P-F型)はそれぞれ1例ずつであった. 上皮内癌部, 浸潤癌部ともに純粋な膵型(P型)は認めなかった. 【考察】膵癌の進行過程における粘液形質変化の判定には上皮内癌部と浸潤癌部の正確な診断と, 正しい免疫組織化学の結果判定が重要である. 本研究では, 上皮内癌部と浸潤癌部の区別ためにVictoria blue染色を参考として用いた. また, 粘液の糖鎖付加状態に対する免疫組織化学の反応の違いから, HGMおよびM-GGMC-1に対する抗体を用いた. CD10の発現は上皮内癌部で5例(12.2%), 浸潤癌部で1例(2.4%)と発育進展によって発現頻度が低くなる傾向があったが, 統計学的な有意差は認めなかった. 浸潤性膵癌においては純粋な膵型が存在しないことは, 膵癌の進行過程において細胞分化が低下するという考えに矛盾しないと考えられた. 膵癌の進行過程において, 胃幽門腺型粘液のM-GGMC-1およびMUC6の発現が上皮内癌部から浸潤癌部になるにつれ有意に低下していた. 先行研究においても, このようなMUC6の発現減少は見られ, 癌化過程におけるMUC6発現減衰の原因に興味が持たれる. 【結語】膵癌の進行過程における粘液形質変化の解析から, 膵癌における上皮内癌部の粘液形質は胃腺窩上皮幽門腺型(FG型)あるいは胃幽門腺型(G型)が主体であり, 浸潤癌部では胃腺窩上皮型(F型)に粘液形質変化し, 胃幽門腺型(G型)や膵型(P型), 腸型(I型)の発現頻度は低くなる. 続きを見る
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滝沢, 一泰 ; 若井, 俊文
出版情報: 新潟医学会雑誌 — 新潟医学会雑誌.  128  pp.216-226,  2014-05.  新潟医学会
本文リンク: http://hdl.handle.net/10191/43734
概要: 【緒言】膵癌は, 罹患数と死亡数がほぼ同数であり難治性消化器癌の代表である. 膵癌の予後予測因子としては組織分化度, リンパ節転移の有無, 癌遺残の有無などの病理学的因子が報告されている. 近年, 大腸癌, 食道癌, 胃癌および乳頭部癌など の消化器癌において, 簇出が腫瘍の浸潤性発育を反映し予後予測因子であることが報告されている. 本研究の目的は, 外科切除された浸潤性膵管癌を対象として, HE染色およびAE1/AE3免疫染色を行い簇出の評価方法を確立することである. また, 簇出を臨床病理学的因子と比較検討し, 高簇出群は術後の転移・再発により術後成績は不良であるという仮説を立て, 簇出の予後予測因子としての臨床的意義を解明することである. 【方法】1990年から2010年に切除された浸潤性膵管癌81例を対象とした. 症例の平均年齢は65.6歳(38-74歳), 性別は男性54例, 女性27例であった. 腫瘍の最大割面を代表切片とし, HE染色, AE1/AE3免疫染色を行った. 簇出の定義は癌発育先進部の間質に認められる5個未満の細胞からなる癌胞巣とした. 各染色別の簇出のカットオフ値は, Cox比例ハザードモデルによるカイ二乗値を基準として決定した. 【結果】簇出検出個数の平均±標準誤差はHE染色で7.8±0.5個であり, AE1/AE3免疫染色で15.3±1.0個であった. 各染色別での簇出カットオフ値は, HE染色では13個以上(X^2=23.123, P<0.001)を高簇出群, AE1/AE3免疫染色では15個以上(X^2=9.236, P=0.002)を高簇出群とした. HE染色, AE1/AE3免疫染色ともに高簇出群はTNM分類でのG3(低分化型)と有意に関連していた(各々, P=0.016, P<0.001). 多変量解析では, TNM分類G3(ハザード比2.062, P=0.011), 顕微鏡的癌遺残(ハザード比2.603, P=0.001)およびHE染色での高簇出(ハザード比5.213, P<0.001)が独立した有意な予後不良因子であった. HE染色で評価された高簇出群の累積2年生存率は0%, 生存期間中央値は11.9か月であり, 低簇出群の累積2年生存率43.1%, 生存期間中央値21.7か月と比較して有意に術後成績は不良であった(P<0.001). 【考察】浸潤性膵管癌において簇出を検討した報告は少なく, 高簇出を定義する統一基準に関する報告はない. 多変量解析の結果では, HE染色での高簇出が最も強い独立した予後不良因子であった. AE1/AE3免疫染色では簇出の検出が容易で多数の簇出が検出されるにもかかわらず, HE染色で診断された簇出高度陽性判定基準のほうが予後因子として有用であった. この原因としては, AE1/AE3免疫染色はすでに生物学的活性を失っている癌細胞も簇出として計測している可能性が考えられた. 【結語】浸潤性膵管癌の簇出診断では, HE染色(簇出カットオフ値13個)の方がAE1/AE3免疫染色(簇出カットオフ値15個)より予後因子として有用である. 続きを見る
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須田, 和敬 ; 若井, 俊文
出版情報: 新潟医学会雑誌 — 新潟医学会雑誌.  128  pp.83-89,  2014-02.  新潟医学会
本文リンク: http://hdl.handle.net/10191/43635
概要: 【緒言】発症から長期経過の潰瘍性大腸炎(Ulcerative Colitis:UC)における慢性持続性炎症粘膜では, 大腸癌の発生リスクが高いことが知られている. UC合併大腸癌(Ulcerative Colitis-Associated Colorectal Carcinoma:UC-CRC)では, 高頻度に胃型への粘液形質変化を認めるが, 慢性持続性炎症粘膜からの発癌過程における背景粘膜の粘液形質変化に関しては十分に解明されていない. 本研究の目的は, UC合併大腸癌背景粘膜における胃型への粘液形質変化を解析し, 胃型への粘液形質変化は発癌高危険群を選別するための指標となるかを明らかにすることである. 【方法】外科切除が施行された全大腸炎型UC-CRC 9例を対象とした. 外科切除が施行された非担癌全大腸炎型UCのうち, UC-CRC群に年齢, UC罹患期間を極力合致させた9例を抽出しUC対照群とした. UC対照群とUC-CRC群における非腫瘍性直腸粘膜における胃腺窩腺型粘液形質であるMUC5ACに対する免疫組織化学を施行し, MUC5AC発現様式および発現頻度を検討した. MUC5AC発現様式は, sporadic type(散在性発現)とdiffuse type(びまん性発現)とに分類した. 【結果】UC-CRC群において検索した4882陰窩中1161陰窩(23.8%)がsporadic typeのMUC5AC発現を示し, UC対照群における3769陰窩中408陰窩(10.8%)と比較してUC-CRC群で有意にsporadic typeのMUC5AC発現頻度が高かった(P<0.001). UC-CRC群において検索した4882陰窩中206陰窩(4.2%)がdiffuse typeのMUC5AC発現を示し, UC対照群における3769陰窩中7陰窩(0.2%)と比較してUC-CRC群で有意にdiffuse typeのMUC5AC発現頻度が高かった(P<0.001). UC-CRC群では9例(100%), UC対照群では8例(89%)がsporadic typeのMUC5AC発現を認めた(P>0.999). UC-CRC群では7例(78%), UC対照群では2例(22%)がdiffuse typeのMUC5AC発現を認め, UC-CRC群では非腫瘍性直腸粘膜においてdiffuse typeのMUC5AC発現を認める頻度が高かった(P=0.057). ペアマッチさせた症例間で検索した陰窩単位でのdiffuse typeのMUC5AC発現頻度を比較した結果, 9ペア中5ペアにおいてUC-CRC群の方がdiffuse typeのMUC5AC発現頻度が有意に高かった. 【結語】免疫組織化学で同定されるdiffuse typeのMUC5AC発現陰窩は, UCの発癌高危険群を選別するための指標となる可能性がある. 続きを見る
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Tun, Aye Pa Pa
出版情報: 新潟医学会雑誌.  133  pp.253-265,  2019-06.  新潟医学会
本文リンク: http://hdl.handle.net/10191/00051862
概要: 外科切除原発性小腸腺癌(以下小腸癌)60症例60病変を対象に,その臨床病理学的特徴と,免疫組織学的検索によるCK7,CK20発現,粘液形質について検討した.小腸癌の発生部位は,十二指腸32例(53.4%),空腸17例(28.3%),回腸11 例(18.3%)であった.臨床病理学的特徴は発生部位による差はなく,小腸癌全体では大腸癌との間にも差はみられず,小腸癌は大腸癌とほぼ同質の生物学的悪性度示す癌と考えられた.CK7の発現は小腸癌全体で45.0%,CK20の発現は61.7%であり,大腸癌全体と比較して有意にCK7発現頻度が高く,CK20発現頻度が低かった.CK7とCK20の発現を組み合わせた発現パターンには多様性があり,大腸癌の大部分を占めるCK7(-)/CK20(+)のパターンは小腸癌全体では41.7%に過ぎず,他のパターンが13.3~25.0%を占めた. こうした小腸癌のCK7,CK20発現パターンの多様性は癌の発生部位に起因する可能性があり,十二指腸癌・空腸癌で回腸癌に比べCK7の発現頻度が高くCK20の発現頻度が低い傾向があった.粘液形質では,小腸癌全体では大腸癌全体に比べ,MUC5AC,MUC6の発現頻度が有意に高く(43.3% vs.16.0%,23.3% vs. 9.3%),MUC2,CD10の発現頻度が有意に低かった(43.3% vs. 61.3%,13.3% vs. 37.3%).粘液形質別の頻度では,小腸癌の30.0%が冑型,16.7%が胃腸混合型,6.7%が小腸型,28.3%が大腸型であった.すなわち,小腸癌では発生母組織である小腸粘膜上皮の細胞系列が維持されているものは極めて少なく(小腸型の6.7%),半数近く(胃型の30.0%と胃腸混合型の16.7%)では胃粘膜上皮細胞への細胞系列転換が起きていることが想定された大腸癌との比較では,小腸癌は大腸癌全体に比べ,胃型の頻度が有意に高く(30.0% vs. 2.7%),小腸型の頻度が有意に低かった(6.7% vs. 32.0%). こうした小腸癌の粘液形質の特徴はCK7,CK20発現と同様に癌の発生部位により異なり,十二指腸癌・空腸癌では回腸癌に比べ胃型の発現頻度が高い傾向があった.これらの免疫組織学的検索から,小腸癌のCK7,CK20発現の多様性や胃型粘液形質発現は十二指腸癌・空腸癌の特徴的所見であり,十二指腸癌・空腸癌は回腸癌とは組織発生や発癌メカニズムが異なる可能性が示唆された. 続きを見る
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渡邉, 佳緒里
出版情報: 新潟医学会雑誌 — 新潟医学会雑誌.  131  pp.290-302,  2017-05.  新潟医学会
本文リンク: http://hdl.handle.net/10191/49548
概要: 【背景】UCの非腫瘍大腸粘膜や大腸癌, 前癌病変であるdysplasiaでは, 胃型粘液(腺窩上皮型と幽門腺型)の発現があり, 慢性持続性炎症により胃型細胞へ分化形質変化を来した大腸粘膜が癌の発生母地である可能性が示唆されている. 本研究で は, 大腸癌を合併するUC(担癌UC)と合併しないUC(非担癌UC)の非腫瘍大腸粘膜を対象として, それらの胃型粘液発現を免疫組織学的に検索し, UC大腸上皮の胃型細胞への粘液形質変化やそのパターンが, 大腸癌発生の高リスク群を予測するためのマーカーとなりうるかどうか, について検討した. 【対象と方法】担癌UC群14例, 非担癌UC群104例, 炎症性腸疾患を合併しない大腸癌の非癌部大腸(非IBD群)38例の非腫瘍粘膜を対象として, MUC2(腸杯細胞粘液マーカー), MUC5AC・HGM(胃腺窩上皮粘液マーカー), MUC6・M-GGMC-1(胃幽門腺粘液マーカー)に対する免疫染色を行い, 胃型粘液の発現頻度, 同発現細胞の陰窩内分布様式, を検討した. 【結果】腺窩上皮型粘液発現は, 非担癌UC群の90.4%, 担癌UC群の100%に, 幽門腺型粘液発現は, 非担癌UC群の42.3%, 担癌UC群の78.6%に認められた. いずれの発現率も, 非IBD群に比べ有意に高かった(P<0.05). UC罹患年数10年未満の症例では, 腺窩上皮型・幽門腺型いずれの粘液発現率も, 担癌UC群が非担癌UC群に比べ有意に高かった(P<0.05, P<0.01). UC罹患年数10年以上の症例では, 担癌UC群, 非担癌UC群で胃型粘液発現頻度に有意差はなかった. UC群の腺窩上皮型粘液発現細胞は, 胃幽門腺粘膜や非IBD群と同様に陰窩中層~表層にかけて分布するものと陰窩全長にわたって分布するもの(aberrantパターン)とがあった. 幽門腺型粘液を発現する細胞も, 幽門腺粘膜と同様に陰窩中層~底部に分布するものと陰窩のほぼ全長にわたって分布するもの(aberrantパターン)とが認められた. UC罹患年数10年未満の症例では, 胃型粘液を発現する陰窩に占めるaberrantパターンの割合は, 腺窩上皮型で非担癌UC群の18.2%, 担癌UC群の100%, 幽門腺型で非担癌UC群の17.6%, 担癌UC群の80.0%であった. いずれも担癌UC群が非担癌UC群に比べ有意に高かった(P<0.01). UC罹患年数が10年以上の症例で, 胃型粘液を発現する陰窩に占めるaberrantパターンの割合は, 腺窩上皮型で非担癌UC群の23.5%, 担癌UC群の88.9%, 幽門腺型で非担癌UC群の0%, 担癌UC群の33.3%であった. 腺窩上皮型粘液では, 担癌UC群が非担癌UC群に比べ有意に高かった(P<0.01)が, 幽門腺型粘液では両群間に有意差はなかった. 【結論】UC大腸粘膜では, 胃型(腺窩上皮型および幽門腺型)粘液発現細胞への形質転換が起きている. UC罹患年数10年未満の症例では, 胃型粘液の発現および発現細胞が陰窩のほぼ全長にわたって存在するaberrantパターン陰窩の存在が, 罹患年数10年以上の症例では腺窩上皮型粘液発現がaberrantパターンを示す陰窩の存在が, UCの大腸癌発生高リスク群を予測するためのマーカーになりうる可能性があると考えられた. 続きを見る
9.

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熊木, 大輔 ; 寺井, 崇二
出版情報: 新潟医学会雑誌 — 新潟医学会雑誌.  130  pp.155-162,  2016-03.  新潟医学会
本文リンク: http://hdl.handle.net/10191/44353
概要: 大腸のmicropapillary carcinoma(以下MP)の生物学的悪性度, および低分化型腺癌との予後比較を行い, 大腸癌における独立した組織型としてのMPの臨床病理学的意義について検討した. 外科切除大腸癌516例(うち予後追跡 調査が行われたものは509例)を対象とした. MPの病理組織診断は, HE染色標本, D2-40免疫染色標本, PAS粘液染色標本で行い, HE染色標本で空隙内に微小乳頭状の癌胞巣が認められ, かつ癌のリンパ管侵襲や粘液結節内に存在する癌胞巣であることが否定されたもののみをMPとした. 対物40倍1視野以上の領域でMPを認めた症例をMP成分ありとした. 低分化型腺癌成分に関しても, 同様の基準でその有無を判定した. 大腸癌516例中68例(13.2%)にMP成分の併存を認めた. MP成分併存癌(MP癌)は非併存癌(non-MP癌)に比べ, 脈管侵襲陽性率, リンパ節転移陽性率, 遠隔転移陽性率いずれも有意に高頻度で, TNM stageの病期進行度もStage III-IVの頻度が有意に高かった. 予後比較でも, MP癌はnon-MP癌に比べ有意に予後不良であった. 低分化型腺癌成分併存癌との予後比較では, MP成分のみが存在する群, 低分化型腺癌成分のみが存在する群, 両成分が存在する群の間で予後に有意差はなかった. これらのことから, 大腸のMPは生物学的悪性度が高い癌の組織成分と考えられたが, 低分化型腺癌とは予後で代表される生物学的悪性度には差がないことから, MPを大腸癌の独立した組織型として分類・診断することの臨床病理学的意義は乏しいと考えられた. 続きを見る
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横田, 陽子 ; 味岡, 洋一
出版情報: 新潟医学会雑誌 — 新潟医学会雑誌.  130  pp.109-122,  2016-02.  新潟医学会
本文リンク: http://hdl.handle.net/10191/44335
概要: "p53遺伝子変異は同蛋白過剰発現として免疫組織学的に同定することが可能とされているが, 免疫染色に用いられるモノクローナル抗体にはさまざまなものがあり, どのような染色態度を蛋白過剰発現とするかについても一定の基準はない. 本研究では免疫 染色による蛋白過剰発現判定法の確立を目的として, 市販・汎用されている2種類(PAb1801, DO7)のモノクローナル抗体を用いて, それぞれの染色態度と遺伝子変異との相関を検討した. 外科切除ホルマリン固定大腸進行癌29病変, 内視鏡的に切除された大腸粘膜内腫瘍53病変を対象とし, 2種類の抗体を用いた免疫染色で同一領域の染色態度を判定した. 次に, 各領域からマイクロダイセクションによりDNAを抽出して, p53遺伝子のエクソン5-8をPCRで増幅し, シークエンス解析により遺伝子変異を検索した. 進行癌29病変から42領域, 粘膜内腫瘍53病変から237領域の合わせて279領域が検索対象として抽出された. 2種類の抗体間の免疫染色態度の対比では, DO7染色はPAb1801染色に比べ陽性細胞頻度がより高く, 染色強度がより強く表現される傾向があった. 蛋白過剰発現の判定は, 用いる抗体により異なる. PAb1801染色では, nested(陽性細胞が混在しない陽性細胞集簇巣が散在)とdiffuse(陰性細胞が混在することなく陽性細胞がびまん性に存在)が, DO7染色では, nestedとdiffuse/strong(染色強陽性)が, 他の染色態度に比べ有意に高い遺伝子変異率(71.1-93.8%)を示したことから, これらの染色態度を蛋白過剰発現とすることが妥当と考えられた. 蛋白過剰発現を示す領域の遺伝子変異はその大半(69.2-100%)が, アミノ酸置換を伴うmissense mutation(またはmissense mutationを伴う)であり, 変異型p53蛋白が免疫染色により同定されたものと考えられた. 他方, DO7染色ではdiffuse/weak(染色弱陽性)のものに遺伝子変異は認められず, 同染色態度を蛋白過剰発現としないよう注意が必要である. 一方, 免疫染色陰性領域でもPAb1801染色の50%, DO7染色の77.3%には遺伝子変異が認められ, それらの変異パターンはdeletion, insertion, nonsense mutation, splicing site mutationなど蛋白のtruncationをきたす変異であった. p53免疫染色陰性例にもp53蛋白不活化をきたす遺伝子変異が存在する可能性を考慮する必要がある. \n" 続きを見る
11.

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佐野, 知江
出版情報: 新潟医学会雑誌 — NIIGATA MEDICAL JOURNAL.  132  pp.307-313,  2018-09.  新潟医学会
本文リンク: http://hdl.handle.net/10191/00051551
概要: アポトーシスの病理組織学的検索には, caspase系酵素の活性化により生じた断片化DNAを認識するTU NEL 法が汎用されてきたしかしTUNEL法には細胞壊死も認識することや,アポトーシス指数(apoptotic index: A.I. )を算定する際,どの大きさの断片核までをTUNEL陽性ととるかについての基準が無いことから,A.I.には客観性が乏しい,等の問題点があった.M30 cytoDEATH免疫染色はアポトーシスの際にcaspase 3で切断される細胞骨格蛋白CK18のエピトープを特異的に認識する方法であり,アポトーシスの早期段階の細胞質に陽性となり,壊死細胞には染色されないことから,A.I.の客観的算定に有用な方法と期待されている.本研究では,内視鏡的切除ホルマリン固定大腸腺腫27病変を対象に, M30 cytoDEATH免疫染色とTUNEL法の比較を行うことで, M30 cytoDEATH免疫染色がアポトーシスの病理組織学的検索に有用かどうかについて検討した.パラフィンブロックからの3μm切片にHE染色,M30 cytoDEATH免疫染色,TUNEL法を施行した. M30 cytoDEATH免疫染色では,細胞質全体がびまん性もしくは顆粒状に染色されるものを陽性,TUNEL 法では,茶色に発色された顆粒状もしくは点状陽性物すべてをTUNEL陽性(All TUNEL陽性)とし,それらの中で形態学的にアポトーシス小体(apoptotic body: AB)と判定できるものをAB TUNEL陽性,とした.TUNEL法のAll TUNEL陽性では,小点状陽性物が複数集族して存在するものの明らかなアポトーシス小体を形成しないもの,小型点状陽性物が腺管甚底側にびまん性に出現するものなどがみられた. M30 cytoDEATH免疫染色では,陽性判定に苦慮するものは少なかった. 24例の腺腫から54領域を抽出し,各領城のA.I.を算定した. All TUNEL陽性のA.I.(All TUNEL A.I.) は9.49士0.87%, AB TUNEL陽性のA.I.(AB TUNEL A.I.)は3.73士0.29%, M30 cytoDEATH 免疫染色のA.I.(M30 A.I.)は2.53士0.35%で,それぞれの間には有意差があった( P<0.001). M30 A.I.は, All TUNEL A.I., AB TUNEL A.I. のいずれとも有意に相関していた( P<0.001). 以上のことから,M30 cytoDEATH免疫染色はアポトーシスを正確に判定しており,その判定の容易さや客観性の観点から,これまで汎用されてきたTUNEL法に代わり, アポトーシスの病理組織学的検索に有用な方法として期待される. 続きを見る