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論文(リポジトリ)

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加藤, 泰介 ; 阿部, 佑一 ; 那波, 宏之 ; 木南, 凌 ; 廣川, 祥子 ; 田中, 稔 ; 水野, 誠
出版情報: 新潟医学会雑誌 — 新潟医学会雑誌.  124  pp.683-690,  2010-12.  新潟医学会
本文リンク: http://hdl.handle.net/10191/28910
概要: ニューレグリン-1 (Neuregulin-1: NRG1) は統合失調症の感受性遺伝子として報告された神経栄養因子である. これまでに様々なNRG1遺伝子の遺伝子改変マウスが作られ, 統合失調症モデル動物としての評価が行われてきた. NR G1は細胞移動・軸策誘導・ミエリン形成等の中枢神経系発達を制御する機能を担っている. また, NRG1は末梢神経系においても栄養因子として働き, 内耳蛸牛神経細胞の生存に関わっている. そして, NRG1と受容体であるErbBシグナルの異常は聴力の低下を引き起こすことが知られている. 従って, NRG1シグナルの障害は異常な神経発達を引き起こすと考えられる. 遺伝的要因に加えて胎児の低酸素障害などの環境因子も統合朱謂症のリスク因子と考えられており, これらはNRG1の発現異常も誘導する. よって遺伝的背景・環境要因は共に異常なNRG1シグナルを引き起こすことによって, 神経発達障害という統合失調症の原因仮説に結びつくことが予想される. 今回私は, 神経発達段階での過剰NRG1シグナルと統合失調症発症リスクとの関係を検討した. 新生仔マウスに対して組換えNRG1ペプチドを投与した後, 認知行動解析による評価を行った. プレパルスインヒビション (prepulse inhibition: PPI) は不必要な情報を取り除く知覚フィルター機能を評価するものであり, 統合失調症で低下が報告されている. 動物モデルを用いたPPIの測定は音驚愕反応を用いて行われ, NRG1遺伝子改変マウスにも障害が報告されている. しかしながら, これまでの遺伝子改変マウスは全身性変異でありながら聴覚機能を調べられた例はない. そこで私はNRG1投与マウスの認知機能に加えて聴覚機能の解析も同時に行った. 認知行動解析の結果, NRG1投与マウスは劇的なPPIの低下と, 音条件付け学習の低下を示した. 加えて, 統合失調症の陰性症状を反映すると考えられている社会性行動にも障害が見られた. しかしながら聴性脳幹反応を用いた聴覚機能解析の結果, このマウスには重度の聴力異常があることが分かった. この結果はこれまでに報告されてきたNRG1ミュータントマウスのPPIの低下には聴覚系への影響が関わっているという重要な懸念を示唆するものである. だが, 聴覚系が関与しない社会性行動試験の結果は遺伝子改変マウスの異常形質を再現するものであり, 神経発達段階でNRG1シグナルの異常がこの疾患に何らかの関わり持っている可能性を示している. 続きを見る
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任海, 学
出版情報: 新潟医学会雑誌 — 新潟医学会雑誌.  118  pp.340-346,  2004-07.  新潟医学会
本文リンク: http://hdl.handle.net/10191/2957
概要: プレパルスインヒビション(prepulse inhibition; PPI)は,ヒトやラットなど動物種を超えて簡便におこなうことが出来る知覚フィルター機能の測定法である.PPIは統合失調症患者や関連する精神疾患において低下することが広く知ら れている.上皮成長因子(epidermal growth factor; EGF)を幼少期に末梢慢性投与したラットは,成熟後にPPIの低下など統合失調症に類似した様々な認知行動異常を引き起こす.そこで本研究では非定型抗精神病薬のクロザピン,リスペリドンに加えて,抗精神病薬として開発が進んでいる2型シクロオキシゲナーゼ(cyclooxygenase-2; COX-2)阻害薬であるセレコキシブ(celecoxib)と,カンナビノイド受容体CB1のアンタゴニストであるAM251を成熟後の幼少期EGF投与ラットに慢性投与し,EGF誘発性PPI異常に対する改善効果の評価をおこなった.その結果,非定型抗精神病薬であるクロザピンおよびリスペリドンは,PPI異常を改善することが判明した.この実験結果は,統合失調症患者の知覚フィルター異常に対して非定型抗精神病薬が改善効果を有するという臨床的知見と整合性がある.一方,セレコキシブとAM251の慢性投与では,幼少期EGF投与ラットのPPI異常に対する改善効果は認められなかった.このことからプロスタグランジンシグナルやカンナビノイド系は,幼少期EGF投与ラットのPPI異常に関与していないことが示唆された.以上の結果から幼少期EGF投与ラットは,統合失調症に対する治療薬の開発に利用できる有用な動物モデルとなりうることが示された. 続きを見る
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青木, 弘行
出版情報: 新潟医学会雑誌 — 新潟医学会雑誌.  122  pp.262-270,  2008-05.  新潟医学会
本文リンク: http://hdl.handle.net/10191/19539
概要: 統合失調症発症の仮説の一つに妊娠母体のウイルス感染などの周産期障害が原因とする説がある.実際,妊娠実験動物でのインフルエンザの感染は,母体に炎症を誘発し流産を起こすと共に,かろうじて生存した産仔も様々な認知行動異常を呈する.本研究では,この 母体ウイルス感染の結果がゲノムRNA投与により再現できるか,関与している炎症性サイトカインはどんなものかという疑問を検討した.マウス妊娠中後期に,2本鎖RNAを尻尾静脈投与する,もしくはウイルス感染により誘導される炎症性サイトカイン(インターフェロンα,インターロイキン-1α,-2,-6)を腹腔投与した.その母体から産まれてきたマウスを成長させ,新奇探索運動量,音驚愕反応,プレパルスインヒビションの行動指標を測定した.結果,マウス仔の行動異常は,ウイルスゲノム成分である2本鎖RNAの投与で再現され,また,インターロイキン-2投与も同様に運動量上昇とプレパルスインヒビション障害を誘発した.これらの実験結果は,妊娠母体インフルエンザ感染に誘発される産仔の認知行動異常には,自然免疫を介したサイトカイン誘導といった母体内の免疫炎症反応が関与していることを示している. 続きを見る
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関井, 愛紀子 ; 飯田, 亘 ; 五十嵐, 正徳 ; 川野, 雅資
出版情報: 新潟大学保健学雑誌 — 新潟大学保健学雑誌.  12  pp.1-9,  2015-09.  新潟大学医学部保健学科
本文リンク: http://hdl.handle.net/10191/38956
概要: 本研究は,農村地域で暮らす統合失調症患者に対して,地域生活継続の促進要因と阻害要因を分析し,精神障害者が農村地域で継続して生活するための支援を明らかにすることを目的とした.対象は男性の統合失調症患者4名.地域生活継続の促進要因は【実感した病 気の治癒】【焦りに気づき変化した就労への思い】【障害者年金が支援】【信仰の存在で安定】【地域の風土から生まれた支援】【将来への希望】【良好な家族関係】の7カテゴリ,阻害要因は【気になる世間の目】【仕事に対する将来的な問題】【外で働けないことによる不満足感】【治療継続への気がかり】の4カテゴリが抽出された.精神障害者が安定した生活を送るには,家族を中心にした支援者の存在と病気を話題にされない安心できる関係性の構築が不可欠である.地域住民には精神障害の知識と精神障害者の理解を目的とした公開講座,家族には家族会への参加を図る必要がある.地域住民の反応を気にする家族からの職探しの禁止,仕事の制限があり精神障害者が希望する地域生活継続を阻害していた.家族も支援の対象であると認識し,家族の気持ちを聴く姿勢で関わることが重要である.農村地域は相互扶助機能を有し「集落機能」が発揮されている.この地域の特徴を踏まえ,精神障害者を支える組織を作り広げることも可能になる.精神障害者とその親世代を中心とした家族を支援の対象として捉え関わることが農村地域で暮らす精神障害者への支援となる.<br />This study analyzed a promotion factor and a disincentive of the local life continuation for patients with schizophrenia to live in farm village area, and it was intended to determine support a mental patient continued it in a farm village area, and to live a life. The subject is four patients with schizophrenia of men. As for the promotion factor of the local life continuation, as for 7 categories of [a good family relationship], disincentive, 4 categories of [the non-feeling of satisfaction by not working] [anxiety to treatment continuation] were extracted [eyes of the world becoming the mind] [a future problem for the work] [support born from the local climate] [hope to the future] [an invalidity pension supports it] [it becomes stable in presence of the faith] [the healing that we realized of illness] [thought to the working that we noticed a fret, and changed]. The construction of the relationship that can be relieved that it is not made presence and the disease of the supporter whom we worked as led by a family a topic is essential so that a mental patient lives a stable life. It is necessary to plan participation in family society to knowledge of the psychic disturbance and an open lecture for the purpose of the understanding of the mental patient, a family to local inhabitants. We inhibited the area life continuation that there were prohibition of the job hunting from the family who minded the response of local inhabitants, a limit of the work, and a mental patient hoped for. The family recognizes that it is a subject of the support, and what we are associated with posture to hear the feeling of the family is important. In the farm village area, a village function is shown having a mutual aid function. We make tissue supporting a mental patient and, based on this local characteristic, can open it. It is with the support to the mental patient whom it lives for in a farm village area we arrest a family led by the parental generation as a subject of the support, and to associate with a mental patient. 続きを見る
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渡部, 雄一郎
出版情報: 新潟医学会雑誌 — 新潟医学会雑誌.  128  pp.7-12,  2014-01.  新潟医学会
本文リンク: http://hdl.handle.net/10191/43592
概要: 統合失調症は複数の遺伝要因と環境要因が相互に影響し合って発症する複雑な脳疾患であると考えられている. 統合失調症の分子病態はいまだ明らかでないが, 筆者らはその一端を解明しつつある. 統合失調症のサイトカイン仮説に基づいて, 統合失調症患者 の死後脳や末梢血におけるサイトカイン発現異常を明らかにするとともに, 高い妥当性を有する統合失調症の動物モデルとして新生仔期サイトカイン投与動物を作成した. また, ゲノム解析により疾患感受性座位を同定し, ごく一部ではあるが遺伝要因を明らかにした. さらに, 統合失調症の血液検査キットの開発を目指して, 末梢血トランスクリプトーム解析に基づく診断分類予測モデルを構築し, このモデルにより高い感度・特異度をもって患者群と対照群を判別できることを示した. 統合失調症の分子病態を完全に解明し, 妥当性の高い診断法や根治的な治療法の開発につなげるために, 今後も研究を進めていくことが必要である. 続きを見る
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凌, 一葦
出版情報: 新潟医学会雑誌 — 新潟医学会雑誌.  127  pp.670-680,  2013-12.  新潟医学会
本文リンク: http://hdl.handle.net/10191/36218
概要: 統合失調症の初期症状は20歳前の中学生・高校生に出現する場合がある. 初期症状を見逃さないためには, 中学生・高校生の親たちが彼らの心身の状態やその変化に細心の注意を払う必要がある. 一方, 本人もしくは親たちが持つ統合失調症に対するスティ グマ(社会的烙印)は, この初期症状の否認と受診回避の1つの原因となりうる. 日本の家庭では, 父親に比べて母親が子供の育児にかかる時間が長いことが知られている. そこで, 本研究は中学生・高校生をもつ母親を対象として, 統合失調症へのスティグマの高低に影響する因子の探索を統計学的に行った. 本研究のアンケート調査の対象は, 中学生・高校生を持つ38歳から57歳までの母親1,225例である. 本研究の解析に用いた人口統計学的な因子は11因子である. すなわち, 母親のアンケート時の年齢, 子供の学籍, 母親の学歴, アンケート時の居住地, 配偶者の有無, 家族構成, 職業, 雇用形態, 世帯年収, 統合失調症の人との接触経験の有無, および, 精神保健福祉活動に参加した経験の有無である. 中学生・高校生を持つ母親が統合失調症に対して抱くスティグマの程度を計測するために, Linkスティグマ尺度修正版を用いた. データ解析は単一因子解析と多変量解析の両方が行われた. 複数の群間での平均値の有意差検定は, Welchのt検定, Studentのt検定および分散分析(ANOVA)により行われた. Linkスティグマ尺度のスコアの高低に有意な影響を及ぼす因子の抽出には, 逐次変数増加法による重回帰分析を用いた. この重回帰分析における従属変数はLinkスティグマ尺度のスコアであり, 説明変数の候補因子としてすべての人口統計学的な因子を用いた. 対象者1,225名のうち89.7%の母親は年齢が50歳未満であり, 大学卒業以上の最終学歴を持つ母親は全体の22.1%であった. また, 就労形態が常勤以外である母親は全体の83.3%, 世帯年収が500万円以上である母親は全体の69.5%であった. 統合失調症の人との接触経験をもつ母親は3.2%, 精神保健福祉活動に参加した経験がある母親は8.3%であった. スティグマの程度に影響を与える因子を抽出する多変量解析を行った結果, スティグマを高める因子として, 居住地(東海・近畿地方以外の地域), 配偶者なし, 職業(医療従事者・教育関係者・公務員), 統合失調症の人との接触経験あり, であった. 本研究の結果より, 日本における中学生・高校生の母親が持つ統合失調症へのスティグマの特徴が明らかとなった. スティグマを高める因子の中で, 配偶者なしの母親や職業として医療従事者, 教育関係者および公務員である母親に対して, 適切な啓発活動を行うことによりスティグマを下げる可能性があると考える. 続きを見る