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1.

論文(リポジトリ)

論文(リポジトリ)
橋本, 喜文
出版情報: 新潟医学会雑誌 — 新潟医学会雑誌.  131  pp.635-643,  2017-11.  新潟医学会
本文リンク: http://hdl.handle.net/10191/50011
概要: 【緒言】間質線維化反応(Desmoplastic Reaction : 以下DR) とは,間質で線維芽細胞などが増生する状態を指し,癌が浸潤する際に発育先進部において認められる.早期大腸癌において,DRは粘膜下層浸潤の有無を判定する際の指標 として用いられてきた.一方,進行大腸癌においては,発育先進部におけるDRが予後予測因子となるとの報告が散見される.本研究の目的は,進行大腸癌の発育先進部におけるDRの臨床的意義を明らかにすることである.【方法】2006年1月から2011年12月までの間に当科でRO切除されたpT3以深Stage II / III大腸癌のうち,家族性大腸腺腫症および炎症性腸疾患合併症例を除外した173例を対象とした. DRの診断は,病理組織診断時に切除検体から作製された全てのHE標本を観察して行われた. DRは原発巣の壁深達度が漿膜下層以深に及ぶ領域を観察して診断し,細い膠原線維が多層性に形成される成熟型(Mature : 以下DR1),癌発育先進部の間質中に好塩基性の太い膠原線維の束からなるケロイド様線維が認められる中間型(Intermediate : 以下DR2),やや好酸性の粘液様間質で囲まれたケロイド様線維が不規則に認められる未熟型(Immature : 以下DR3)に分類した.そして,DRと臨床病理学的因子との関連について解析し,DRと無再発生存率との関連を検討した.さらに,診断者間の一致度を評価するため,二人の診断医が独立してDRを評価した.診断の一致度は,k統計量を用いて評価した.【結果】対象173例中DR1が87例(50.3%),DR2が65例(37.6%),DR3が21例(12.1%)であった. DR3は,静脈侵襲あり(P=0.026),リンパ節転移あり(P=0.003),籏出G3(P=0.012),および低分化胞巣G3 (P<0.001) との間に統計学的に有意な関連を認めた.無再発生存率に関する単変量解析では,籏出G3 (P=0.034),DR3 (P=0.003)で有意に予後が不良であった.多変量解析では,DR3がハザード比1.539 (95%信頼区間 : 1.146-2.066)であり,独立した予後不良因子であった(P=0.004).DR診断のk統計量は0.448であり,診断の再現性に関しては中等度の一致であった.【結論】進行大腸癌において,DR3はR0切除後の独立した予後不良因子であり,再発高リスク群を抽出する指標になる可能性がある. 続きを見る
2.

学位論文(リポジトリ)

学位
橋本, 喜文
出版情報: pp.1-25,  2018-03-23.  新潟大学
本文リンク: http://hdl.handle.net/10191/50451
概要: 【緒言】間質線維化反応(Desmoplastic reaction:以下DR)とは,間質で線維芽細胞などが増生する状態を指し,癌が浸潤する際に発育先進部において認められる.早期大腸癌において,DRは粘膜下層浸潤の有無を判定する際の指標として 用いられてきた.一方,進行大腸癌においては,発育先進部におけるDRが予後予測因子となるとの報告が散見される.本研究の目的は,進行大腸癌の発育先進部におけるDRの臨床的意義を明らかにすることである.【方法】2006年1月から2011年12月までの間に当科でR0切除されたpT3以深Stage II/III大腸癌のうち,家族性大腸腺腫症および炎症性腸疾患合併症例を除外した173例を対象とした.DRの診断は,病理組織診断時に切除検体から作製された全てのHE標本を観察して行われた.DRは原発巣の壁深達度が漿膜下層以深に及ぶ領域を観察して診断し,細い膠原線維が多層性に形成される成熟型(Mature:以下DR1),癌発育先進部の間質中に好塩基性の太い膠原線維の束からなるケロイド様線維が認められる中間型(Intermediate:以下DR2),やや好酸性の粘液様間質で囲まれたケロイド様線維が不規則に認められる未熟型(Immature:以下DR3)に分類した.そして,DRと臨床病理学的因子との関連について解析し,DRと無再発生存率との関連を検討した.さらに,観察者間の診断の一致度を評価するため,二人の診断医が独立してDRを評価した.診断の一致度は,k統計量を用いて評価した.【結果】対象173例中DR1が87例(50.3%),DR2が65例(37.6%),DR3が21例(12.1%)であった.DR3は,静脈侵襲(P=0.026),リンパ節転移(P=0.003),簇出(P=0.012),および低分化胞巣(P<0.001)との間に統計学的に有意な関連を認めた.無再発生存率の単変量および多変量解析では,DR3がハザード比1.539(95%信頼区間:1.146-2.066)であり,独立した予後不良因子であった(P=0.004).DR診断のk統計量は0.448であり,診断の再現性に関しては中等度の一致であった.【結論】進行大腸癌において,DRはR0切除後の独立した予後不良因子であり,再発高リスク群を抽出する指標になる可能性がある.<br />学位の種類: 博士(医学). 報告番号: 甲第4421号. 学位記番号: 新大院博(医)甲第820号. 学位授与年月日: 平成30年3月23日<br />新潟医学会雑誌. 2017. 131(11), 635-643.<br />新大院博(医)甲第820号 続きを見る
3.

学位論文(リポジトリ)

学位
大内, 彬弘 ; Ohuchi, Akihiro
本文リンク: http://hdl.handle.net/10191/0002001048
概要: 低分化胞巣は“間質浸潤を呈する癌胞巣の中で,5個以上の細胞から構成され,腺腔形成が乏しい癌胞巣”と定義され,大腸癌の予後不良因子の一つとされている.本研究では,低分化胞巣のpT1(SM)大腸癌のリンパ節転移との関係を検討し,そのリンパ節転移 リスク因子としての有用性について考察した.リンパ節郭清がなされたホルマリン固定外科切除大腸pT1(SM)癌221例を対象に,大腸癌取扱い規約に従い,癌の主組織型,SM浸潤距離,脈管侵襲(リンパ管侵襲:Lyと静脈侵襲:V)の有無,簇出のGrade,低分化胞巣の出現の有無,を検索した.対象例のリンパ節転移率は8.6%であった.低分化胞巣は221例中の102例(46.2%)に認められた.各病理組織因子とリンパ節転移との相関では,単変量解析でLy, 簇出, 低分化胞巣がリンパ節転移と有意に相関していた(P<0.0001, P=0.027, P<0.0001).多変量解析では,Lyと低分化胞巣のみが独立したリンパ節転移リスク因子であった(P=0.021, P=0.013).各病理組織因子と低分化胞巣との相関では,SM浸潤距離1,000μm以上,Ly陽性,簇出Grade 2/3の病変で,有意に低分化胞巣出現頻度が高かった(全てP<0.001). 低分化胞巣が出現していた102例では,67.6%で簇出と出現部位が重複していた.重複例は,簇出Grade1で56.5%,Grade 2/3で90.0%であり,簇出Grade 2/3で有意に低分化胞巣との重複頻度が高かった(P=0.0005).低分化胞巣はHE染色標本でも評価が容易であり,免疫染色等の併用も不要であることから,pT1(SM)大腸癌のリンパ節転移を予測する簡便かつ正確性,再現性の高い病理組織因子として有用と考えられた.また,簇出と密接な関連があることから,低分化胞巣は簇出の代用になりうる可能性があると同時に,癌組織型の最低分化度も代表しうる組織因子である可能性も示唆された.これらのことから,癌の組織型と簇出の2因子を包括し,pT1(SM)大腸癌のリンパ節転移予測病理組織因子の軽減にも寄与することが期待される.<br />新大院博(医)第1101号 続きを見る