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論文(リポジトリ)

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市川, 寛 ; 島田, 能史 ; 永橋, 昌幸 ; 亀山, 仁史 ; 坂田, 純 ; 小林, 隆 ; 若井, 俊文 ; 井筒, 浩 ; 兒玉, 啓輔 ; 中田, 光隆
出版情報: 新潟医学会雑誌 — 新潟医学会雑誌.  130  pp.420-428,  2016-07.  新潟医学会
本文リンク: http://hdl.handle.net/10191/44834
概要: 【緒言】近年,様々な癌種において悪性度に関わるdriver遺伝子が発見され,その遺伝子が関与するシグナル伝達経路を標的とした分子標的薬の開発が盛んに行われている.今後は次世代シークエンサーを臨床検査に応用したclinical sequenc ingによりdriver遺伝子災術を同定し,患者個々に最適な薬剤を選択することが必要になる.その際に問題となるのは臨床検体の取り扱いである.特に胃癌は組織型ごとに腫瘍組織中のがん細胞の密度にばらつきが大きく,組織型ごとに抽出されたDNA濃度や質が次世代シーケンサーでの解析に耐えうるか否かを明らかにする事は重要である.本研究の目的は,胃癌腫瘍組織からのDNA抽出結果と組織型との関係を検討し,次世代シーケンサーによる遺伝子変異解析を想定したDNA抽出における注意点を明らかにすることである.【方法】胃切除を施行された胃癌100症例のホルマリン固定後パラフィン包埋(FFPE)検体を対象とした.組織型の内訳は乳頭腺管癌(pap)1例,高分化型管状腺癌(tub1) 9例, 中分化型管状腺癌(tub2) 45例,充実型低分化型腺癌(por1) 12例,非充実型低分化型腺癌(por2)24例,印環細胞癌(sig) 6例,粘液癌(muc) 3例であった. 腫瘍含有割合が最も高い領域を選択し, 20μmに薄切した切片から組織を削り取り(スクレープ),DNA抽出に用いた. 単位面積当たりのDNA濃度(ng/μ1/mm^2)や断片化(Q-ratio : [129b]/[41bp])について組織型間で比較検討した.【結果】100症例全ての検体から次世代シーケンサーの解析に十分なDNAを抽出することができた.抽出に用いた領域の腫瘍含有割合はpor2, sig, mucで有意に低かった. 単位面積当たりのDNA濃度はpap/tub1/tub2/por1群 (中央価1.05ng/μ1/mm^2,範囲:0.07ng/μ1/mm^2-2.75ng/μ1/mm^2)と比鮫して, por2/sig/muc群( 中央値0.75ng/μ1/mm^2, 範囲 : 0.08ng/μ1/mm^2-1.63ng/μ1/mm^2)で有意に低かった(p-value=0.04).一方,Q-ratioについては2群間に有意な差は認められなかった.【結論】胃癌において,組織型がpor2, sigまたはmucのFFPE検体から抽出されるDNA濃度は他の組織型と比較して低値である.上記の組織型に該当し, 腫瘍含有割合が低い検体では, 抽出に用いる切辺枚数やスクレープする組織の面積を増やすといった対策を講じることが肝要である。 続きを見る
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論文(リポジトリ)

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島田, 能史 ; 永橋, 昌幸 ; 市川, 寛 ; 亀山, 仁史 ; 坂田, 純 ; 小林, 隆 ; 若井, 俊文 ; 奥田, 修二郎 ; 井筒, 浩 ; 兒玉, 啓輔 ; 中田, 光隆
出版情報: 新潟医学会雑誌 — 新潟医学会雑誌.  130  pp.191-202,  2016-03.  新潟医学会
本文リンク: http://hdl.handle.net/10191/44357
概要: 【緒言】 次世代シーケンサーによってがん薬物療法の効果を予測するdriver mutationを網羅的に解析することが可能となり, がん薬物療法は個別化治療の時代に入りつつある. 最大で数百程度までのがん関連遺伝子変異を対象にしたtarge t sequencingでは日常臨床で普及しているホルマリン固定パラフィン包埋(Formalin-fixed paraffin-embedded : FFPE)サンプルを利用することができる. FFPEサンプル作製に際しては, DNAの質と量の確保が重要である. FFPEサンプルでは, ホルマリン固定によるDNAの断片化が生じるため, 各医療施設での病理標本固定条件がDNAの質に影響する. 一方, 生検材料などの微小検体においても, 次世代シーケンサーによる遺伝子変異解析に耐えうるDNAの量が確保できるか否かは臨床上の重要な問題である. 本研究の目的は, 次世代シーケンサーによる遺伝子変異解析のためのFFPEサンプル作製方法を確立すること, および微小検体からのDNA抽出方法を明らかにすることである. また, 実際にFFPEサンプルを用いて次世代シーケンサーによる癌の遺伝子変異解析が可能であることを明らかにすることである. 【方法】 1) 過去に作製された10%酸性ホルマリン固定FFPEサンプルを用いて, 次世代シーケンサーによる遺伝子変異解析が可能か否かを検討した. 2) FFPEサンプル作製時のホルマリン固定法を標準化するために, ホルマリン種類および固定時間の条件を変えてFFPEサンプルを作製し, DNA濃度とDNAの断片化を評価した. 3) 次世代シーケンサーによる遺伝子変異解析に必要な最低限のサンプルサイズを決定するために, 組織採取面積の条件を変えてDNAを抽出し, それぞれのDNA濃度を測定した. 4) 生検材料を用いて次世代シーケンサーによる遺伝子変異解析が可能か否かを明らかにするために, 生検材料からDNAを抽出し, DNA濃度を測定した. 5) 次世代シーケンサーによる固形癌の遺伝子変異解析ツール(CancerPlex"【○!R】"にて, 大腸癌外科切除100症例の10%中性緩衝ホルマリン固定FFPEサンプルを使用し, 415の重要な癌の遺伝子変異を解析した. そして, 1症例あたりの遺伝子変異数, および変異の頻度が高い遺伝子を求めた.<br />【結果】 1) 過去に作製された10%酸性ホルマリン固定FFPEでは, DNAの断片化が高度であり, 次世代シーケンサーによる遺伝子変異解析を行うことができなかった. 2) 固定液の種類に関わらず, ホルマリン固定時間が経過するとDNAの断片化が進行した. しかし, 10%中性緩衝ホルマリンでは, 10%酸性ホルマリンと比較してDNAの断片化が起こりにくかった. 3) 20μm未染プレパラート1枚から3×3mmの組織採取を行うことで最低限のDNA濃度を確保できた. 4) 生検材料においても20μm未染プレパラート1枚から組織採取を行うことで最低限のDNA濃度を確保できた. 5) 大腸癌100症例で全例に有意な癌の遺伝子変異が検出され, 1症例あたりの遺伝子変異数は中央値10(範囲 : 2-49)であった. 大腸癌100例全体で247種類の癌の遺伝子変異が検出可能であった. 【結論】 次世代シーケンサーによる遺伝子変異解析において理想的なFFPEサンプルを作製するためには, 10%中性緩衝ホルマリンを使用し, 固定時間は24時間程度として必要最低限とすることが肝要である. また, 生検材料などの微小な検体からも次世代シーケンサーによる遺伝子変異解析が可能であることから, この技術の適応範囲は広く, より多くの患者に適切ながん薬物療法の提案ができるものと期待される. 続きを見る