close
1.

論文(リポジトリ)

論文(リポジトリ)
星, 隆洋
出版情報: 新潟医学会雑誌 — 新潟医学会雑誌.  126  pp.601-611,  2012-11.  新潟医学会
本文リンク: http://hdl.handle.net/10191/35436
概要: 近年, 腫瘍化のポテンシャルはないと考えられてきた過形成性ポリープ(hyperplastic polyp: HP)の病理診断や生物学的性格についての再検討がなされるようになってきた. 従来の病理診断ではHPとされる病変の中で, 腺管構造や細 胞増殖動態の異常を伴うものは, sessile serrated adenoma/polyp (SSA/P)と呼ばれ, MSI大腸癌の前癌病変として, HPからは独立した病変単位として認識されている. 他方, HPは細胞質の性状や粘液量によりMVHP (microvesicular HP), MPHP (mucin-poor HP), GCHP (goblet cell-rich HP)の3亜型に分類されるようになってきた. 本研究では内視鏡的摘除大腸HP 420病変とSSA/P 130病変を対象に, HP3亜型とSSA/Pの臨床病理学的特徴, 粘液形質, HPの3亜型とSSA/Pとの組織発生学的連続性について検討し, HPを亜型分類することの妥当性と臨床的意義について考察した. HPの亜型別頻度はMVHP 289/420病変(68.8%), MPHP 29/420病変(6.9%), GCHP 102/420病変(24.3%)であり, 3亜型間で発生部位(右側大腸/左側大腸), 最大径, 年齢, 性別, 肉眼型(隆起型/表面型)に有意差はなかった. 粘液形質では, MVHP, MPHPはGCHPと比較して, 右側大腸では胃腺窩上皮型および幽門腺型粘液が高発現し, 左側大腸では胃腺窩上皮型粘液が高発現していた. MVHPとMPHPの組織学的差異は, 背景の慢性炎症細胞浸潤の程度の違いに起因し, 両者は一つのカテゴリーに一括される(広義のMVHP)と考えられた. 広義のMVHPと前癌病変であるSSA/Pは粘液形質が同質であり, 広義のMVHPはSSA/Pの前駆病変であることが想定され, 広義のMVHPは臨床的治療や慎重な経過観察が必要になる可能性がある. 以上のことから, HPを3亜型ではなく, 広義のMVHPとGCHPの2亜型に細分類することには, 妥当性と臨床的意義があると考えられた. 続きを見る
2.

論文(リポジトリ)

論文(リポジトリ)
河久, 順志
出版情報: 新潟医学会雑誌 — NIIGATA MEDICAL JOUNAL.  132  pp.293-305,  2018-09.  新潟医学会
本文リンク: http://hdl.handle.net/10191/00051550
概要: SSA/P (sessile serrated adenoma/polyp)は鋸歯状管腔構造を特徴とする大腸の上皮性増殖性病変のひとつであり, MSI-H(microsatellite instability-high: マイクロサテライト 不安定)大腸癌の前駆病変として位置づけられるようになってきた(serrated neoplasia pathway :SNP ). しかし,SNPはSSA/PとMSI-H大腸癌の分子病理学的プロファイルの類似性からの推定であり,実際のSSA/P癌化例の病理学的側面からの裏付けは十分に得られてない.本研究では,外科切除および内視鏡的切除大腸pTis(M) 癌2,613例と粘膜内病変が残存したpTl(SM)癌559例を対象として,早期大腸癌に占めるSSA/P由来癌の頻度,臨床病理学的および病理組織学的特徴,粘液形質発現についての総合的解析を行った. SSA/P由来癌はpTis(M)癌の1.2%, pTl(SM)癌の2.0%を占めたが,右側結腸ではそれぞれ3.2%, 4.4%を占めた. SSA/P由来早期大腸癌は表面型の頻度が高く(pTis (M)癌で61.3%, pTl(SM)癌で5 4.5%), 内視鏡的発見が困難な病変が存在する可能性があり,SSA/P由来癌の割合は過小評価されていることが想定される.右側結腸では,SSA/Pに由来する癌が少なくとも5%以上は占めることが推察された. SSA/P由来大腸癌では,鋸歯状構造,師状・融合腺管,小型腺管,小型円形核,低異型度癌,粘液癌,脱分化(癌の低分化化)などの7つの特徴的組織所見を示すとされているが,本研究対象の粘膜内癌部では,鋸歯状構造(68.3%)や飾状・融合腺管(61.0%), 低異型度癌(75.6%)の出現頻度が高く,SM浸潤部では師状・融合腺管(5 4.6%)は保たれているものの,鋸閑状構造や低異型度癌の頻度は低く,粘液癌(3 6.4%)や癌の脱分化(低分化化) (25.5%) がみられた.これらのことから,癌の発育進展の観点からは,SSA/Pに由来する大腸癌は,粘膜内では中分化型と超高分化型の両者の性格が共存し,SM 浸潤に伴い急激に脱分化し,粘液癌に移行する傾向があることが推定された.また,粘膜内癌部,SM浸潤部ともに70% 以上で,上記7つの組織所見の2つ以上が認められた.粘液形質発現では,癌に併存するSSA/P では,MUC2 (100%), MUC5AC (100%), MUC6 (83.3%) が高発現していたが,癌化病巣でもそれらの粘液形質プロファイルは保持されており,粘膜内癌部,SM浸潤部ともにMUC2はほぼ全例(90.9% ~ 97.6%) に発現し,MUC5AC も70% 以上,MUC6も50% 前後以上で発現がみられた.これらSSA/P 癌化例の粘液形質プロファイルは粘液癌進行大腸癌のそれと類似しており,SSA/Pに由来する癌は粘液癌進行大腸癌へと進展することが推定された.本研究結果から得られたSSA/P 由来癌に特徴的な組織所見と粘液形質発現の観点から,由来不明な粘膜病変脱落pTl (SM) 癌,進行癌,そしてpTl(SM)純粋癌の解析を行うことが今後の課題であり,その結果によっては大腸癌に占めるSSA/P由来癌の割合は,本研究結果の5%以上を更に上回る可能性も想定され,大腸癌の組織発生におけるSNPの役割もより明確になるものと考えられた. 続きを見る
3.

学位論文(リポジトリ)

学位
中村, 隆人
出版情報: pp.1-18,  2016-03-23.  新潟大学
本文リンク: http://hdl.handle.net/10191/41901
概要: SSA/P(sessile serrated adenoma/polyp)は鋸歯状管腔構造を特徴とする大腸の上皮性増殖性病変のひとつであり、MSI-H (microsatellite instability-high:マイクロサテライト不安 定)大腸癌の前駆病変として位置づけられるようになってきた(serrated neoplasia pathway: SNP)。SNPでは、BRAF変異をinitial mutationとして、CpG island methylationの蓄積(CpG island methylation phenotype: CIMP)、ミスマッチ修復遺伝子MLH1のmethylationによる機能不全、MSI-Hを経て大腸癌が発生・生長すると考えられているが、病理組織学的にSSA/Pに由来することが確認された大腸癌(SSA/P由来癌)を対象として、これら遺伝子異常の網羅的解析を行った研究はない。本研究では、外科切除および内視鏡的切除SSA/P内早期癌(SSA/P由来癌)37例を対象に、SSA/P由来癌が実際にSNPで起きるとされている遺伝子変異を伴っているのか、遺伝子変異のパターンに多様性があるのかどうか、について検討した。対照は、発生部位と深達度をマッチングさせた腺腫内癌(腺腫由来癌)37例とした。パラフィンブロックから3μm切片でHE染色、MLH1蛋白に対する免疫染色を行い、10μm切片からDNAを抽出し、BRAF、KRAS、p53の遺伝子変異の有無、CIMPとMSIの解析を行った。免疫染色では、SSA/P由来癌では腺腫由来癌に比べ有意にMLH1蛋白の喪失が認められた(81.1% vs 0%: p<0.001)。遺伝子解析では、SSA/P由来癌はBRAF変異率(78.1%)、CIMP+頻度(94.6%)、MSI-H頻度(83.8%)が高く、腺腫由来癌とは有意差があった(P<0.001)。一方、SSA/P由来癌のKRAS変異率(3.1%)、p53変異率(9.4%)は腺腫由来癌に比べ有意に低かった(P<0.001)。SSA/P由来癌32例の遺伝子解析結果を層別化すると、SSA/P由来癌は、A群[BRAF+, KRAS-, CIMP+, MSI-H, p53-]:56.3% (18/32), B群[BRAF+, KRAS-, CIMP+, MSS,p53+ or -]:15.6% (5/32)、C群[BRAF-, KRAS-, CIMP+, MSI-H, p53-]:18.8% (6/32)、その他:9.3% (3/32)の4群に大別された。これらのことから、SSA/P由来癌では、半数以上でSNPで想定されている遺伝子異常を示す(A群)ことが遺伝子変異の観点からも直接検証されたが、遺伝子変異には多様性があり、MSI-Hの代わりにp53異常が癌化に関与するものや、BRAF変異が必ずしもinitial mutationではないものも存在すると考えられた。SSA/P由来癌で共通してみられる遺伝子異常はCIMP+であり、SSA/Pを起点とするSNPは、CIMP+で特徴付けられる大腸癌の発生経路と考えられた。<br />学位の種類: 博士(医学). 報告番号: 甲第4106号. 学位記番号: 新大院博(医)甲第673号. 学位授与年月日: 平成28年3月24日<br />新大院博(医)甲第673号 続きを見る
4.

学位論文(リポジトリ)

学位
河久, 順志
出版情報: 2016-09-20.  新潟大学
本文リンク: http://hdl.handle.net/10191/45091
概要: SSA/P(sessileserratedadenoma/polyp)は鋸歯状管腔構造を特徴とする大腸の上皮性増殖性病変のひとつであり、MSI-H(microsatelliteinstability-high:マイクロサテライト不安定)大腸 癌の前駆病変として位置づけられるようになってきた(serrated neoplasia pathway:SNP)。しかし、SNPはSSA/PとMSI-H大腸癌の分子病理学的プロファイルの類似性からの推定であり、実際のSSA/P癌化例の病理学的側面から裏付けは十分に得られてない。本研究では、外科切除および内視鏡的切除大腸pTis(M)癌 2,613例と粘膜内部癌が残存したpT1(SM)癌 559例を対象として、早期大腸癌に占めるSSA/P由来癌の頻度、臨床病理学的および病理組織学的特徴、粘液形質発現についての総合的解析を行った。SSA/P由来癌はpTis(M)癌の1.2%、pT1 (SM)癌の2.0%を占めたが、右側結腸ではそれぞれ3.2%、4.4%を占めた。SSA/P由来早期大腸癌は表面型の頻度が高く(pTis(M)癌で61.3%、pT1(SM)癌で54.5%)、内視鏡的発見が困難な病変が存在する可能性があり、SSA/P由来癌の割合は過小評価されていることが想定される。右側結腸では、SSA/Pに由来する癌が少なくとも5%以上は占めることが推察された。SSA/P由来大腸癌では、鋸歯状構造、筋状・融合腺管.小型腺管、小型円形核、低異型度癌、粘液癌、脱分化(癌の低分化化)などの7つの特徴的組織所見を示すとされているが、本研究対象の粘膜内癌部では、鋸歯状構造(68.3%)や飾状・融合腺管(61.0%)、低異型度癌(75.6%)の出現頻度が高く、SM浸潤部では飾状・融合腺管(54.6%)は保たれているものの、鋸歯状構造や低異型度癌の頻度は低く、粘液癌(36.4%)や癌の脱分化(低分化化) (25.5%)がみられた。これらのことから、癌の発育進展の観点からは、SSA/Pに由来する大腸癌は、粘膜内では中分化型と超高分化型の両者の性格が共存し、SM浸潤に伴い急激に脱分化し、粘液癌に移行する傾向があることが推定された。また、粘膜内癌部、SM浸潤部ともに70%以上で、上記7つの組織所見の2つ以上が認められた。粘液形質発現では、癌に併存するSSA/Pでは、MUc2(100%)、MUC5AC(100%)、MUC6(83.3%)が高発現していたが、癌化病巣でもそれらの粘液形質プロファイルは保持されており、粘膜内癌部、SM浸潤部ともにMUC2はほぼ全例(90.9%~97.6%)に発現し、MUC5ACも70%以上、MUC6も50%前後以上で発現がみられた。これらSSA/P癌化例の粘液形質プロファイルは粘液癌進行大腸癌のそれと類似しており、SSA/Pに由来する癌は粘液癌進行大腸癌へと進展することが推定された。本研究結果から得られたSSA/P由来癌に特徴的な組織所見と粘液形質発現の観点から、由来不明な粘膜内部脱落pT1(SM)癌、進行癌、そしてpT1(SM)純粋癌の解析を行うことが今後の課題であり、その結果によっては大腸癌に占めるSSA/P由来癌の割合は、本研究結果の5%以上を更に上回る可能性も想定され、大腸癌の組織発生におけるSNPの役割もより明確になるものと考えられた。<br />学位の種類: 博士(医学). 報告番号: 甲第4205号. 学位記番号: 新大院博(医)甲第704号. 学位授与年月日: 平成28年9月20日<br />新大院博(医)甲第704号 続きを見る