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須藤, 翔 ; 廣瀬, 雄巳 ; 石川, 博補 ; 堅田, 朋大 ; 斉藤, 敬太 ; 滝沢, 一泰 ; 高野, 可赴 ; 坂田, 純 ; 小林, 隆 ; 皆川, 昌広 ; 若井, 俊文
出版情報: 新潟医学会雑誌 — 新潟医学会雑誌.  128  pp.269-275,  2014-06.  新潟医学会
本文リンク: http://hdl.handle.net/10191/43748
概要: 【目的】大腸癌肝転移と肝内胆管癌は両者ともに腺癌であり, 画像検査や腫瘍マーカー等も類似した所見を示すことが多い. 今回我々は, 術前に肝内胆管癌との鑑別が困難であり, 切除標本の免疫組織化学により診断可能となった胆管浸潤を伴う大腸癌肝転移 の2例を経験したので報告する. 【対象・方法】対象となった2例はいずれも過去に大腸癌に対する根治手術を施行されていた. 腹部CT検査で胆管浸潤を伴う肝腫瘤を指摘され, 術前に大腸癌肝転移と肝内胆管癌との鑑別は困難であった. 切除標本の免疫組織化学により, 両者の鑑別診断を行った. 【結果】「症例1」: 71歳, 男性. 直腸癌Stage Iに対する手術施行後4年7か月の腹部CT検査で肝右葉に腫瘤を指摘された. 肝内胆管後区域枝および尾状葉枝に拡張を認め, 胆管浸潤が疑われた. 肝内胆管後区域枝および尾状葉枝に腫瘍栓を認め, 肝右葉切除・尾状葉切除・肝外胆管切除が施行された. 「症例2」: 75歳, 女性. 上行結腸癌Stage IIに対する手術後2年5か月の腹部CT検査で肝後区域に腫瘤を指摘された. 大腸癌肝転移を疑われ, 全身化学療法を施行されたが反応性は明らかでなく, 腫瘤の胆管浸潤も認められるようになったため, 肝右葉切除・肝外胆管切除が施行された. いずれの症例も, 腫瘍細胞はCytokeratin(CK)7陰性, CK20陽性を示し, 組織学的に大腸癌肝転移と診断された. 【考察】胆管浸潤は肝内胆管癌に特徴的な画像所見とされている. 今回経験した大腸癌肝転移の2例はいずれも胆管浸潤所見が認められ, 肝内胆管癌との鑑別は画像上困難であった. 両者の鑑別診断に際しては大腸癌既往に関する情報が重要であるが, 大腸癌原発巣の切除から時間が経過した異時性再発例や化学療法への反応性が乏しい場合, 術前診断は容易ではない. 大腸癌肝転移と肝内胆管癌の病理診断において, 免疫組織化学の有用性が報告されている. 大腸上皮マーカーであるCK20と胆管上皮マーカーであるCK7の組み合わせにより正確な組織診断が可能となる. 2例ともCK7陰性かつCK20陽性であり, 大腸癌肝転移と診断する強い根拠となった. 【結論】肝内胆管癌との鑑別が困難であった胆管浸潤を伴う大腸癌肝転移の2切除例を経験した. 両者の鑑別診断にはCK7, CK20に対する免疫組織化学が有用である. 免疫組織化学による正確な鑑別診断により, 適切な薬物療法の選択が可能となる. 続きを見る
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野上, 仁
出版情報: 新潟医学会雑誌 — 新潟医学会雑誌.  127  pp.538-547,  2013-10.  新潟医学会
本文リンク: http://hdl.handle.net/10191/36140
概要: 【緒言】近年, 切除可能な大腸癌肝転移に対して腫瘍の生物学的評価や潜在的転移巣の治療, 切除範囲の縮小を目指した術前化学療法を行う機会が増えてきているが, 術前化学療法を施行した大腸癌肝転移における適切な肝切離マージンは解明されていない. 本研究の目的は, 術前化学療法施行例と未施行例から摘出された標本を用いて, 大腸癌肝転移に対する術前化学療法が肝内微小転移巣に与える効果を検討し, 術前化学療法施行例における適切な肝切離マージンを解明することである. 【材料と方法】2005年1月から2011年12月までに, 当科で肝切除が行われた大腸癌肝転移63例(術前化学療法施行21例, 未施行42例)を対象とし, 切除標本における肝内微小転移巣の頻度, 分布を算出した. 術前化学療法の治療効果判定は造影CT検査を用いてRECISTガイドラインに準じて行い, 組織学的効果判定は大腸癌取扱い規約に準じて行った. 肝内微小転移巣の定義は, 肉眼的肝転移巣から非癌肝組織により隔てられた組織学的病巣とし, 肉眼的肝転移巣から各肝内微小転移巣までの組織学的距離および肉眼的肝転移巣から1cm未満の近位領域における肝内微小転移巣の密度(微小転移個数/mm^2)を算出した. 【結果】術前化学療法施行21例中13例が部分奏効を示し, 奏効率は62%であった. 術前化学療法のRECIST評価は組織学的効果判定と有意に関連していた(P=0.048). 肝内微小転移巣を63例中39例(62%)に計260病巣認めた. 肝内微小転移巣の頻度は, 術前化学療法未施行42例中34例(81%)に認めたのに対し, 術前化学療法施行例では21例中5例(24%)と有意に低かった(P<0.001). 肉眼的肝転移巣から各肝内微小転移巣までの距離は, 術前化学療法未施行例で中央値2.25mm(範囲:0.1-17mm), 施行例で中央値1.5mm(範囲:0.2-8mm)であった(P=0.313). 肉眼的肝転移巣から1cm未満の近位領域における肝内微小転移巣の密度は, 未施行例で75.9×10-<-4>個/mm^2, 施行例で87.7×10^<-4>個/mm^2であった(P=0.526). 【結語】術前化学療法施行により肝内微小転移巣の頻度は減少するが, 分布(距離・密度)には影響を与えない. 現在, 大腸癌肝転移において推奨されている肝切離マージン1cm確保は, 術前化学療法を施行した症例においても推奨される. 続きを見る
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相馬, 大輝
出版情報: 新潟医学会雑誌 — 新潟医学会雑誌.  131  pp.491-500,  2017-08.  新潟医学会
本文リンク: http://hdl.handle.net/10191/49654
概要: 【緒言】近年の大腸癌に対する化学療法の進歩を背景として大腸癌肝転移に対して術前化学療法を実施する機会が増えつつあり,大腸癌肝転移に対する術前化学療法の治療効果を予測することは臨床上,重要な課題となっている.抗酸化ストレス蛋白であるNAD ( P) H : quinone oxidoreductase-1 (NQO1)は種々の癌腫で化学療法に対する感受性との関連が示唆されている.本研究では,NQO1発現が大腸癌肝転移に対する術前化学療法の治療効果予測因子となり得るか否かを評価する.【対象と方法】当科で術前化学療法実施後に初回肝切除が施行された大腸癌肝転移23例を対象とした.術前化学療法の治療効果は,肝切除前にRECIST(version 1.1)で判定するとともに,切除標本で大腸癌取扱い規約第8版に従って組織学的に判定した.NQO1発現の有無は,切除標本でNQO1モノクローナル抗体を用いた免疫組織化学を行うことで同定した.肝転移巣の腫瘍細胞がNQO1発現陰性を示す場合,同一標本内の非腫瘍性大型胆管上皮細胞もNQO1発現陰性であればNQO1遺伝子多型ありと判定した.【結果】23例における術前化学療法のRECISTによる治療効果判定は,PR(Partial Response: 部分奏効)が14例,SD(Stable Disease: 安定)が8例,PD(Progressive Disease: 進行)が1例であり,奏効率は61%であった.術前化学療法の組織学的な治療効果判定は,Grade 0が3例,Grade 1が9例,Grade 2が11例であった.23症例中15例(65%)が肉眼的肝転移巣におけるNQO1発現陽性であり,8例(35%)がNQO1発現陰性であった.NQO1発現陰性の8例中,非腫瘍性大型胆管上皮細胞がNQO1発現陰性を示すNQO1遺伝子多型が6例で認められた.肉眼的肝転移巣のNQO1発現の有無と術前化学療法のRECISTおよび組織学的治療効果判定との間に明らかな関連を認めなかった(各々,P=0.400,P=0.193).一方,NQO1遺伝子多型の有無と術前化学療法のRECISTによる治療効果判定との関連を検討すると,NQO1遺伝子多型を認めた6例全例がPRを示したのに対し,NQO1遺伝子多型を認めなかった17例では8例(47%)がPRであり,NQO1遺伝子多型によりNQO1発現陰性の症例では有意に奏効率が高かった(P=0.048).【結語】NQO1が遺伝子多型により発現していない大腸癌肝転移症例は化学療法に対する感受性が高く,NQO1遺伝子多型は大腸癌肝転移に対する術前化学療法の治療効果を予測する有望なバイオマーカーの候補の1つである. 続きを見る
4.

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島田, 哲也
出版情報: 新潟医学会雑誌 — 新潟医学会雑誌.  130  pp.512-522,  2016-09.  新潟医学会
本文リンク: http://hdl.handle.net/10191/45619
概要: 【緒言】近年の大腸癌に対する化学療法の進歩に伴い,切除可能な大腸癌肝転移に対しても術前化学療法を行う機会が増えつつある.本研究の目的は,大腸癌肝転移に対する術前化学療法が肝内微小転移巣と肝切除後の再発・生存に及ぼす影響を明らかにすることであ る.【対象と方法】2005年1月から2013年12月までの間に当科で初回肝切除が施行された大腸癌肝転移74例(術前化学療法施行24例,未施行50例)を対象とした.術前化学療法の治療効果は造影CT検査を用いてRECISTガイドラインに準じて判定した. 肝内微小転移巣は肉眼的肝転移巣から非癌肝組織により隔てられた組織学的病巣と定義した.切除標本において,HE染色に加えて免疫組織化学検査(D2-40モノクローナル抗体,CD34モノクローナル抗体)を行って肝内微小転移巣を同定した.肝切除後の経過観察期間の中央値は52か月であった.【結果】肝内微小転移巣を全74例中45例(61%)に合計278病巣認めた.術前化学療法施行例では,未施行例と比較して,原発巣の病期が進行した症例の占める割合が高く(P=0.001),同時性肝転移(P<0.001),多発性肝転移(P=0.006)を高頻度に認めた.術前化学療法が施行された24例中15例が部分奏効(奏効率は63%)を示した.術前化学療法未施行例では肝内微小転移巣を50例中38例(76%)に認めたのに対し,施行例では24例中7例(29%)に認めたのみであった(P<0.001). 術前化学療法施行例,未施行例の肝切除後の5年無再発生存率は各々56%, 59%, 5年疾患特異的生存率は各々76%, 78%であり,いずれも両群間で明らかな差を認めなかった(各々P=0.986, P=0.822).一方, 肝内微小転位陽性45例,陰性29例の5年無再発生存率は各々48%, 74%であり,陽性例は陰性例と比較して無再発生存率が低く(P=0.036), 肝内微小転移は再発の独立した危険因子であった(ハザード比, 2.635,95%信頼区間, 1.155-6.011,P=0.021).【結語】大腸癌肝転移に対する術前化学療法施行例は,末施行例と比較して生物学的悪性度が高い特徴を有する肺癌が多かったにもかかわらず,肝内微小転移の頻度が少なく,両者の間で肝切除後の無再発生存率,疾患特異的生存率はともに明らかな差を認めなかった. したがって,大腸癌肝転移に対する術前化学療法は肝内微小転移巣を減少させることで肝切除後の無再発生存、疾患特異的生存の改善に寄与している可能性がある. 続きを見る
5.

学位論文(リポジトリ)

学位
相馬, 大輝
出版情報: 2018-03-23.  新潟大学
本文リンク: http://hdl.handle.net/10191/50424
概要: 【緒言】近年の大腸癌に対する化学療法の進歩を背景として大腸癌肝転移に対して術前化学療法を実施する機会が増えつつあり,大腸癌肝転移に対する術前化学療法の治療効果を予測することは臨床上,重要な課題となっている.抗酸化ストレス蛋白であるNAD ( P) H : quinone oxidoreductase-1 (NQO1)は種々の癌腫で化学療法に対する感受性との関連が示唆されている.本研究では,NQO1発現が大腸癌肝転移に対する術前化学療法の治療効果予測因子となり得るか否かを評価する.【対象と方法】当科で術前化学療法実施後に初回肝切除が施行された大腸癌肝転移23例を対象とした.術前化学療法の治療効果は,肝切除前にRECIST(version 1.1)で判定するとともに,切除標本で大腸癌取扱い規約第8版に従って組織学的に判定した.NQO1発現の有無は,切除標本でNQO1モノクローナル抗体を用いた免疫組織化学を行うことで同定した.肝転移巣の腫瘍細胞がNQO1発現陰性を示す場合,同一標本内の非腫瘍性大型胆管上皮細胞もNQO1発現陰性であればNQO1遺伝子多型ありと判定した.【結果】23例における術前化学療法のRECISTによる治療効果判定は,PR(Partial Response: 部分奏効)が14例,SD(Stable Disease: 安定)が8例,PD(Progressive Disease: 進行)が1例であり,奏効率は61%であった.術前化学療法の組織学的な治療効果判定は,Grade 0が3例,Grade 1が9例,Grade 2が11例であった.23症例中15例(65%)が肉眼的肝転移巣におけるNQO1発現陽性であり,8例(35%)がNQO1発現陰性であった.NQO1発現陰性の8例中,非腫瘍性大型胆管上皮細胞がNQO1発現陰性を示すNQO1遺伝子多型が6例で認められた.肉眼的肝転移巣のNQO1発現の有無と術前化学療法のRECISTおよび組織学的治療効果判定との間に明らかな関連を認めなかった(各々,P=0.400,P=0.193).一方,NQO1遺伝子多型の有無と術前化学療法のRECISTによる治療効果判定との関連を検討すると,NQO1遺伝子多型を認めた6例全例がPRを示したのに対し,NQO1遺伝子多型を認めなかった17例では8例(47%)がPRであり,NQO1遺伝子多型によりNQO1発現陰性の症例では有意に奏効率が高かった(P=0.048).【結語】NQO1が遺伝子多型により発現していない大腸癌肝転移症例は化学療法に対する感受性が高く,NQO1遺伝子多型は大腸癌肝転移に対する術前化学療法の治療効果を予測する有望なバイオマーカーの候補の1つである.<br />学位の種類: 博士(医学). 報告番号: 甲第4415号. 学位記番号: 新大院博(医)甲第814号. 学位授与年月日: 平成30年3月23日<br />新潟医学会雑誌. 2017. 131(8), 491-500.<br />新大院博(医)甲第814号 続きを見る
6.

学位論文(リポジトリ)

学位
橋本, 喜文
出版情報: pp.1-25,  2018-03-23.  新潟大学
本文リンク: http://hdl.handle.net/10191/50451
概要: 【緒言】間質線維化反応(Desmoplastic reaction:以下DR)とは,間質で線維芽細胞などが増生する状態を指し,癌が浸潤する際に発育先進部において認められる.早期大腸癌において,DRは粘膜下層浸潤の有無を判定する際の指標として 用いられてきた.一方,進行大腸癌においては,発育先進部におけるDRが予後予測因子となるとの報告が散見される.本研究の目的は,進行大腸癌の発育先進部におけるDRの臨床的意義を明らかにすることである.【方法】2006年1月から2011年12月までの間に当科でR0切除されたpT3以深Stage II/III大腸癌のうち,家族性大腸腺腫症および炎症性腸疾患合併症例を除外した173例を対象とした.DRの診断は,病理組織診断時に切除検体から作製された全てのHE標本を観察して行われた.DRは原発巣の壁深達度が漿膜下層以深に及ぶ領域を観察して診断し,細い膠原線維が多層性に形成される成熟型(Mature:以下DR1),癌発育先進部の間質中に好塩基性の太い膠原線維の束からなるケロイド様線維が認められる中間型(Intermediate:以下DR2),やや好酸性の粘液様間質で囲まれたケロイド様線維が不規則に認められる未熟型(Immature:以下DR3)に分類した.そして,DRと臨床病理学的因子との関連について解析し,DRと無再発生存率との関連を検討した.さらに,観察者間の診断の一致度を評価するため,二人の診断医が独立してDRを評価した.診断の一致度は,k統計量を用いて評価した.【結果】対象173例中DR1が87例(50.3%),DR2が65例(37.6%),DR3が21例(12.1%)であった.DR3は,静脈侵襲(P=0.026),リンパ節転移(P=0.003),簇出(P=0.012),および低分化胞巣(P<0.001)との間に統計学的に有意な関連を認めた.無再発生存率の単変量および多変量解析では,DR3がハザード比1.539(95%信頼区間:1.146-2.066)であり,独立した予後不良因子であった(P=0.004).DR診断のk統計量は0.448であり,診断の再現性に関しては中等度の一致であった.【結論】進行大腸癌において,DRはR0切除後の独立した予後不良因子であり,再発高リスク群を抽出する指標になる可能性がある.<br />学位の種類: 博士(医学). 報告番号: 甲第4421号. 学位記番号: 新大院博(医)甲第820号. 学位授与年月日: 平成30年3月23日<br />新潟医学会雑誌. 2017. 131(11), 635-643.<br />新大院博(医)甲第820号 続きを見る
7.

学位論文(リポジトリ)

学位
島田, 哲也
出版情報: 2018-03-23.  新潟大学
本文リンク: http://hdl.handle.net/10191/50431
概要: 【緒言】近年の大腸癌に対する化学療法の進歩に伴い,切除可能な大腸癌肝転移に対しても術前化学療法を行う機会が増えつつある.本研究の目的は,大腸癌肝転移に対する術前化学療法が肝内微小転移巣と肝切除後の再発・生存に及ぼす影響を明らかにすることであ る.【対象と方法】2005年1月から2013年12月までの間に当科で初回肝切除が施行された大腸癌肝転移74例(術前化学療法施行24例,未施行50例)を対象とした.術前化学療法の治療効果は造影CT検査を用いてRECISTガイドラインに準じて判定した. 肝内微小転移巣は肉眼的肝転移巣から非癌肝組織により隔てられた組織学的病巣と定義した.切除標本において,HE染色に加えて免疫組織化学検査(D2-40モノクローナル抗体,CD34モノクローナル抗体)を行って肝内微小転移巣を同定した.肝切除後の経過観察期間の中央値は52か月であった.【結果】肝内微小転移巣を全74例中45例(61%)に合計278病巣認めた.術前化学療法施行例では,未施行例と比較して,原発巣の病期が進行した症例の占める割合が高く(P=0.001),同時性肝転移(P<0.001),多発性肝転移(P=0.006)を高頻度に認めた.術前化学療法が施行された24例中15例が部分奏効(奏効率は63%)を示した.術前化学療法未施行例では肝内微小転移巣を50例中38例(76%)に認めたのに対し,施行例では24例中7例(29%)に認めたのみであった(P<0.001). 術前化学療法施行例,未施行例の肝切除後の5年無再発生存率は各々56%, 59%, 5年疾患特異的生存率は各々76%, 78%であり,いずれも両群間で明らかな差を認めなかった(各々P=0.986, P=0.822).一方, 肝内微小転位陽性45例,陰性29例の5年無再発生存率は各々48%, 74%であり,陽性例は陰性例と比較して無再発生存率が低く(P=0.036), 肝内微小転移は再発の独立した危険因子であった(ハザード比, 2.635,95%信頼区間, 1.155-6.011,P=0.021).【結語】大腸癌肝転移に対する術前化学療法施行例は,末施行例と比較して生物学的悪性度が高い特徴を有する肺癌が多かったにもかかわらず,肝内微小転移の頻度が少なく,両者の間で肝切除後の無再発生存率,疾患特異的生存率はともに明らかな差を認めなかった. したがって,大腸癌肝転移に対する術前化学療法は肝内微小転移巣を減少させることで肝切除後の無再発生存、疾患特異的生存の改善に寄与している可能性がある.<br />学位の種類: 博士(医学). 報告番号: 乙第2217号. 学位記番号: 新大博(医)乙第1791号. 学位授与年月日: 平成30年3月23日<br />新潟医学会雑誌. 2016. 130(9), 512-522.<br />新大博(医)乙第1791号 続きを見る
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学位論文(リポジトリ)

学位
野上, 仁
出版情報: pp.1-25,  2014-03-24.  新潟大学
本文リンク: http://hdl.handle.net/10191/27286
概要: 【緒言】近年,切除可能な大腸癌肝転移に対して腫瘍の生物学的評価や潜在的転移巣の治療,切除範囲の縮小を目指した術前化学療法を行う機会が増えてきているが,術前化学療法を施行した大腸癌肝転移における適切な肝切離マージンは解明されていない.本研究の 目的は,術前化学療法施行例と未施行例から摘出された標本を用いて,大腸癌肝転移に対する術前化学療法が肝内微小転移巣に与える効果を検討し,術前化学療法施行例における適切な肝切離マージンを解明することである.【材料と方法】2005年1月から2011年12月までに,当科で肝切除が行われた大腸癌肝転移63例(術前化学療法施行21例,未施行42例)を対象とし,切除標本における肝内微小転移巣の頻度,分布を算出した.術前化学療法の治療効果判定は造影CT検査を用いてRECISTガイドラインに準じて行い,組織学的効果判定は大腸癌取扱い規約に準じて行った.肝内微小転移巣の定義は,肉眼的肝転移巣から非癌肝組織により隔てられた組織学的病巣とし,肉眼的肝転移巣から各肝内微小転移巣までの組織学的距離および肉眼的肝転移巣から1cm未満の近位領域における肝内微小転移巣の密度(微小転移個数/mm^2)を算出した.【結果】術前化学療法施行21例中13例が部分奏効を示し,奏効率は62%であった.術前化学療法のRECIST評価は組織学的効果判定と有意に関連していた(P=0.048).肝内微小転移巣を63例中39例(62%)に計260病巣認めた.肝内微小転移巣の頻度は,術前化学療法未施行42例中34例(81%)に認めたのに対し,術前化学療法施行例では21例中5例(24%)と有意に低かった(P<0.001).肉眼的肝転移巣から各肝内微小転移巣までの距離は,術前化学療法未施行例で中央値2.25mm(範囲:0.1-17mm),施行例で中央値1.5mm(範囲:0.2-8mm)であった(P=0.313).肉眼的肝転移巣から1cm未満の近位領域における肝内微小転移巣の密度は,未施行例で75.9×10^<-4>個/mm^2,施行例で87.7×10^<-4>個/mm^2であった(P=0.526).【結語】術前化学療法施行により肝内微小転移巣の頻度は減少するが,分布(距離・密度)には影響を与えない.現在,大腸癌肝転移において推奨されている肝切離マージン1cm確保は,術前化学療法を施行した症例においても推奨される.<br />学位の種類: 博士(医学). 報告番号: 乙第2178号. 学位記番号: 新大博(医)乙第1771号. 学位授与年月日: 平成26年3月24日<br />新潟医学会雑誌. 2013, 127(10), 538-547<br />新大博(医)乙第1771号 続きを見る