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1.

論文(リポジトリ)

論文(リポジトリ)
小川, 洋 ; 若井, 俊文
出版情報: 新潟医学会雑誌 — 新潟医学会雑誌.  129  pp.59-70,  2015-02.  新潟医学会
本文リンク: http://hdl.handle.net/10191/44022
概要: 【緒言】膵癌の上皮内癌から浸潤性膵管癌への進行過程において, ムチン免疫組織化学およびCD10を用いた粘液形質の解析を行った報告はほとんどない. 本研究の目的は, 外科切除された浸潤性膵管癌を対象として, 膵癌の進行過程における粘液形質変化 を解明することである. 【方法】上皮内癌部を含む浸潤性膵管癌41例を対象とし, MUC1, MUC2, HGM, MUC5AC, MUC6, M-GGMC-1, CD10, CDX2の免疫組織化学を行い, 上皮内癌部と浸潤癌部における粘液形質を比較し, 癌の進行過程での粘液形質変化を検討した. 【結果】膵癌症例においてMUC1および胃腺窩上皮型のHGM, MUC5ACは, 各々100%, 93%, 81%と高頻度に発現しており, 上皮内癌部では95%, 95%, 81%, 浸潤癌部では98%, 88%, 68%であり, どちらも高頻度に発現していた. 一方, CD10やMUC2は浸潤癌部, 上皮内癌部をとも低頻度であった. M-GGMC-1, MUC6は, 各々18%, 17%に発現し, 上皮内癌部では各々41%, 34%に発現していたのに対し, 浸潤癌部では各々6%, 7%と低頻度であった. 粘液形質により分類すると, 上皮内癌部においては, 胃腺窩上皮幽門腺型(FG型)が20例と最も多く見られ, そのうち14例は浸潤癌部で胃腺窩上皮型(F型)を示した. また, 上皮内癌部において胃腺窩上皮型(F型)は15例に見られ, 浸潤癌部も14例は同じ粘液形質であった. 浸潤癌部では, 胃腺窩上皮腸型(F-I型), 膵胃腺窩上皮型(P-F型)はそれぞれ1例ずつであった. 上皮内癌部, 浸潤癌部ともに純粋な膵型(P型)は認めなかった. 【考察】膵癌の進行過程における粘液形質変化の判定には上皮内癌部と浸潤癌部の正確な診断と, 正しい免疫組織化学の結果判定が重要である. 本研究では, 上皮内癌部と浸潤癌部の区別ためにVictoria blue染色を参考として用いた. また, 粘液の糖鎖付加状態に対する免疫組織化学の反応の違いから, HGMおよびM-GGMC-1に対する抗体を用いた. CD10の発現は上皮内癌部で5例(12.2%), 浸潤癌部で1例(2.4%)と発育進展によって発現頻度が低くなる傾向があったが, 統計学的な有意差は認めなかった. 浸潤性膵癌においては純粋な膵型が存在しないことは, 膵癌の進行過程において細胞分化が低下するという考えに矛盾しないと考えられた. 膵癌の進行過程において, 胃幽門腺型粘液のM-GGMC-1およびMUC6の発現が上皮内癌部から浸潤癌部になるにつれ有意に低下していた. 先行研究においても, このようなMUC6の発現減少は見られ, 癌化過程におけるMUC6発現減衰の原因に興味が持たれる. 【結語】膵癌の進行過程における粘液形質変化の解析から, 膵癌における上皮内癌部の粘液形質は胃腺窩上皮幽門腺型(FG型)あるいは胃幽門腺型(G型)が主体であり, 浸潤癌部では胃腺窩上皮型(F型)に粘液形質変化し, 胃幽門腺型(G型)や膵型(P型), 腸型(I型)の発現頻度は低くなる. 続きを見る
2.

論文(リポジトリ)

論文(リポジトリ)
滝沢, 一泰 ; 若井, 俊文
出版情報: 新潟医学会雑誌 — 新潟医学会雑誌.  128  pp.216-226,  2014-05.  新潟医学会
本文リンク: http://hdl.handle.net/10191/43734
概要: 【緒言】膵癌は, 罹患数と死亡数がほぼ同数であり難治性消化器癌の代表である. 膵癌の予後予測因子としては組織分化度, リンパ節転移の有無, 癌遺残の有無などの病理学的因子が報告されている. 近年, 大腸癌, 食道癌, 胃癌および乳頭部癌など の消化器癌において, 簇出が腫瘍の浸潤性発育を反映し予後予測因子であることが報告されている. 本研究の目的は, 外科切除された浸潤性膵管癌を対象として, HE染色およびAE1/AE3免疫染色を行い簇出の評価方法を確立することである. また, 簇出を臨床病理学的因子と比較検討し, 高簇出群は術後の転移・再発により術後成績は不良であるという仮説を立て, 簇出の予後予測因子としての臨床的意義を解明することである. 【方法】1990年から2010年に切除された浸潤性膵管癌81例を対象とした. 症例の平均年齢は65.6歳(38-74歳), 性別は男性54例, 女性27例であった. 腫瘍の最大割面を代表切片とし, HE染色, AE1/AE3免疫染色を行った. 簇出の定義は癌発育先進部の間質に認められる5個未満の細胞からなる癌胞巣とした. 各染色別の簇出のカットオフ値は, Cox比例ハザードモデルによるカイ二乗値を基準として決定した. 【結果】簇出検出個数の平均±標準誤差はHE染色で7.8±0.5個であり, AE1/AE3免疫染色で15.3±1.0個であった. 各染色別での簇出カットオフ値は, HE染色では13個以上(X^2=23.123, P<0.001)を高簇出群, AE1/AE3免疫染色では15個以上(X^2=9.236, P=0.002)を高簇出群とした. HE染色, AE1/AE3免疫染色ともに高簇出群はTNM分類でのG3(低分化型)と有意に関連していた(各々, P=0.016, P<0.001). 多変量解析では, TNM分類G3(ハザード比2.062, P=0.011), 顕微鏡的癌遺残(ハザード比2.603, P=0.001)およびHE染色での高簇出(ハザード比5.213, P<0.001)が独立した有意な予後不良因子であった. HE染色で評価された高簇出群の累積2年生存率は0%, 生存期間中央値は11.9か月であり, 低簇出群の累積2年生存率43.1%, 生存期間中央値21.7か月と比較して有意に術後成績は不良であった(P<0.001). 【考察】浸潤性膵管癌において簇出を検討した報告は少なく, 高簇出を定義する統一基準に関する報告はない. 多変量解析の結果では, HE染色での高簇出が最も強い独立した予後不良因子であった. AE1/AE3免疫染色では簇出の検出が容易で多数の簇出が検出されるにもかかわらず, HE染色で診断された簇出高度陽性判定基準のほうが予後因子として有用であった. この原因としては, AE1/AE3免疫染色はすでに生物学的活性を失っている癌細胞も簇出として計測している可能性が考えられた. 【結語】浸潤性膵管癌の簇出診断では, HE染色(簇出カットオフ値13個)の方がAE1/AE3免疫染色(簇出カットオフ値15個)より予後因子として有用である. 続きを見る
3.

学位論文(リポジトリ)

学位
滝沢, 一泰
出版情報: 2014-03-24.  新潟大学
本文リンク: http://hdl.handle.net/10191/27361
概要: 【緒言】膵癌は,罹患数と死亡数がほぼ同数であり難治性消化器癌の代表である.膵癌の予後予測因子としては組織分化度,リンパ節転移の有無,癌遺残の有無などの病理学的因子が報告されている.近年,大腸癌,食道癌,胃癌および乳頭部癌などの消化器癌におい て,簇出が腫瘍の浸潤性発育を反映し予後予測因子であることが報告されている.本研究の目的は,外科切除された浸潤性膵管癌を対象として,HE 染色およびAE1/AE3 免疫染色を行い簇出の評価方法を確立することである.また,簇出を臨床病理学的因子と比較検討し,高簇出群は術後の転移・再発により術後成績は不良であるという仮説を立て,簇出の予後予測因子としての臨床的意義を解明することである.【方法】1990 年から2010 年に切除された浸潤性膵管癌81例を対象とした.症例の平均年齢は65.6 歳(38-74 歳),性別は男性54 例,女性27 例であった.腫瘍の最大割面を代表切片とし,HE 染色,AE1/AE3 免疫染色を行った.簇出の定義は癌発育先進部の間質に認められる5 個未満の細胞からなる癌胞巣とした.各染色別の簇出のカットオフ値は,Cox 比例ハザードモデルによるカイ二乗値を基準として決定した.【結果】簇出検出個数の平均±標準誤差はHE 染色で7.8±0.5 個であり,AE1/AE3免疫染色で15.3±1.0 個であった.各染色別での簇出カットオフ値は,HE 染色では13 個以上(χ2=23.123,P < 0.001)を高簇出群,AE1/AE3 免疫染色では15個以上(χ2=9.236,P = 0.002)を高簇出群とした.HE 染色,AE1/AE3 免疫染色ともに高簇出群はTNM 分類でのG3(低分化型)と有意に関連していた(各々,P= 0.016,P < 0.001).多変量解析では,TNM 分類 G3(ハザード比2.062,P = 0.011),顕微鏡的癌遺残(ハザード比2.603,P = 0.001)およびHE 染色での高簇出(ハザード比5.213,P < 0.001)が独立した有意な予後不良因子であった.HE 染色で評価された高簇出群の累積2 年生存率は0%,生存期間中央値は11 か月であり,低簇出群の累積2 年生存率43.1%,生存期間中央値21 か月と比較して有意に術後成績は不良であった(P < 0.001).【考察】浸潤性膵管癌において簇出を検討した報告は少なく,高簇出を定義する統一基準に関する報告はない.多変量解析の結果では, HE 染色での高簇出が最も強い独立した予後不良因子であった.AE1/AE3 免疫染色では簇出の検出が容易で多数の簇出が検出されるにもかかわらず,HE 染色で診断された簇出高度陽性判定基準のほうが予後因子として有用であった.この原因としては,AE1/AE3 免疫染色はすでに生物学的活性を失っている癌細胞も簇出として計測している可能性が考えられた.【結語】浸潤性膵管癌の簇出診断では,HE 染色(簇出カットオフ値13 個)の方がAE1/AE3 免疫染色(簇出カットオフ値15 個)より予後因子として有用である.<br />学位の種類: 博士(医学). 報告番号: 甲第3851号. 学位記番号: 新大院博(医)甲第591号. 学位授与年月日: 平成26年3月24日<br />新大院博(医)甲第591号 続きを見る