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植木, 匡
出版情報: 新潟医学会雑誌 — 新潟医学会雑誌.  123  pp.32-36,  2009-01.  新潟医学会
本文リンク: http://hdl.handle.net/10191/28232
概要: 症例は51歳女性. 平成19年2月に痛みを伴う乳腺腫瘤を自覚した. 5月に来院するも腫瘤が7mm大と小さく, 画像上不明瞭なため経過観察となった. 11月に再診し, 右乳房A領域に弾性硬の腫瘤を触知した. マンモグラブイ検査にて14×10× 8mm大の微細鋸歯状の辺縁をもつ楕円形の腫瘤を認めた. 超音波検査では, 17×14×12mm大の多角形で等エコーレベルの腫瘤であった. 生検により腺様嚢胞癌の診断を得て, 翌月にlevel Iの腋窩リンパ節郭清を伴う乳房部分切除術を施行した. 病理検査所見では, 癌細胞が篩状様構造からなる胞巣を形成し, 脈管侵襲とリンパ節転移はなかった. ホルモンレセプターはエストロゲンレセプター (-)・プロゲステロンレセプター (±) で, c-erbB-2も陰性であった. 術後補助療法は, 残存乳房の照射のみとし, 抗癌剤治療は予定していない. 比較的まれな乳腺腺様嚢胞癌を経験したので報告する. 続きを見る
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植村, 元貴
出版情報: 新潟医学会雑誌 — 新潟医学会雑誌.  118  pp.694-701,  2004-12.  新潟医学会
本文リンク: http://hdl.handle.net/10191/3894
概要: 乳腺原発の純型粘液癌は他の乳癌に比べ予後良好な癌とされている.これまで同癌の細胞増殖能が他の乳癌に比べて低いことがその良好な予後を規定する因子とされてきたが,近年のムチンコア蛋白の研究の進歩により,MUC2ムチンコア蛋白発現も同癌の生物学的 悪性度を規定している可能性が想定されてきた.本研究では,これら2つの因子にどのような関連があるかを細胞単位で明らかにすることを目的とし,乳腺純型粘液癌におけるMUC2コア蛋白発現および増殖細胞マーカーであるKi-67蛋白発現を二重染色法を用いて検討した.外科切除乳腺原発純型粘液癌12例を対象とし,浸潤性乳管癌14例をコントロールとした.純型粘液癌では浸潤部の12/12(100%),乳管内非浸潤癌巣(CIS)部の6/6(100%)にMUC2発現がみられたのに対し,浸潤性乳管癌でのMUC2発現は1/14(7.1%)のみであった.純型粘液癌のMUC2発現細胞率は,浸潤部で53.2±21.5%(22.3~85.4%),CIS部で12.8±8.2%(O~21.7 %)であった.純型粘液癌浸潤部では,MUC2発現細胞と非発現細胞のKi-67indexはそれぞれ5.5±3.1%と9.6±5.2%であり,両者間には有意差があった.他方CIS部のKi-67indexは,MUC2発現細胞と非発現細胞とで有意差はなかった(3.6±2.7% vs 4.7±3.0%).浸潤部とCIS部との比較では,MUC2発現細胞のKi-67indexに有意差はなかったが,MUC2非発現細胞のKi-67indexは浸潤部がCIS部に比べ有意に高値であった.以上の結果より,純型乳腺粘液癌の浸潤癌部では,MUC2発現細胞は非発現細胞に比べ細胞増殖能が低い癌細胞であり,同癌は細胞増殖能の低いMUC2発現細胞をその構成細胞としていることが他の乳癌に比べ生物学的悪性度が低いことの一因となっていると推定された.しかし,同癌のMUC2発現細胞率にはバラツキがあることから,同癌の中にも生物学的悪性度に違いが生ずる可能性も示唆され,今後続型粘液癌に占めるMUC2発現細胞の割合とリンパ節転移,予後との関係についての検討が必要と考えられた.また,CIS部ではMUC2発現細胞と非発現細胞とで細胞増殖能に違いがなかったことから,MUC2発現と細胞増殖能との関係に癌の間質浸潤がどのように関わってくるかを解明することが,続型乳腺粘液痛の発育進展を明らかにする上で必要であると考察された. 続きを見る
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佐々木, 壽英
出版情報: 新潟医学会雑誌 — 新潟医学会雑誌.  104  pp.920-925,  1990-11.  新潟医学会
本文リンク: http://hdl.handle.net/10191/35092
概要: The chronological changes of numbers and quality of operated patients with cancer were caused by changes of environment and progress of diagnostic techniques in recent years. The main reason of the changes of the environment resulted from the change in dietary habits and trend towards aged society. The number of operated patients with gastric cancer increased from 1273 to 2476 in 15 years (1972~1987) in Niigata Prefecture. And those with early gastric cancer increased from 138 to 1100 in same period. The increase of operated patients with gastric cancer resulted from two factors, which were the increase of aged patients with gastric cancer and of patients with early gastric cancer. It was caused by progress of diagnostic technique and instrument. The magnification of operable indication should be one of the reason which increased the number of operated aged patients with gastric cancer. The number of operated patients with breast cancer incresed from 216 to 461 in 15 years (1972~1987) in Niigata Prefecture. And the breast cancers in stage I were increasing in recent years. Hereafter, an increase of the number of operated patients with lung cancer, colon cancer, breast cancer, cancer of the biliary tract, esophageal cancer and hepatoma was expected. Surgeons must cope with the increase of patients bearing those cancers mentioned above. 続きを見る
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山本, 正治 ; 真柄, 純子 ; 高木, 修子
出版情報: 新潟医学会雑誌 — 新潟医学会雑誌.  104  pp.159-161,  1990-03.  新潟医学会
本文リンク: http://hdl.handle.net/10191/33735
概要: The deaths from the female breast cancer show the marked international variation. Among advanced countries, the deaths in Japan are least frequent. In spite of this evidence, the breast cancer in Japan can not be ignored since it increases gradually. In the present symposium, a review of epidemiological studies was made in order to point out the risk factors, such as high socioeconomic status, fat consumption, obesity, nullipara and low fertility. 続きを見る
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長谷川, 美樹 ; 若井, 俊文
出版情報: 新潟医学会雑誌 — 新潟医学会雑誌.  129  pp.433-440,  2015-08.  新潟医学会
本文リンク: http://hdl.handle.net/10191/44132
概要: 【目的】乳癌に対する手術療法は, 大きく分けて乳房切除手術と乳房温存手術に分けられる. ランダム化比較試験において, 乳房温存手術の局所再発率は乳房切除手術に比して高かったものの生存率に有意差を認めなかったことから, 腫瘍径が小さい(主に3 cm以下)の乳癌に対する乳房温存手術は, 乳がん診療ガイドラインにも推奨される治療となった. しかし, 局所再発率が高値となった場合には生存率に悪影響を及ぼすことも判明しているため, 局所再発の危険性を軽視すべきではない. 本研究では, 合併症を有する乳癌症例に対し, 術後治療を考慮して乳房温存手術の適応を決定している当院の治療成績を明らかにし, 手術適応の妥当性について検証することを目的とした. 【対象と方法】1990年から2011年に原発性乳癌で手術を行った女性のうち, 術前病期I/II期であった乳房温存手術例(BCS群)272例, 乳房切除例(BT群)385例を対象とした. 評価項目は, 疾患特異的-累積局所再発率, 疾患特異的-累積局所・所属リンパ節再発率, 疾患特異的-累積無再発生存率, 累積全生存率とし, P<0.05を有意差ありと判定した. また, ガイドラインのエビデンスとなったEORTC10801 Trial, NSABP B-06 Trial, Milan Trialの手術適応と治療成績, 日本乳癌学会治療ガイドラインの手術適応と日本乳癌学会全国乳がん登録の治療成績について, 当院の手術適応および治療成績と比較した. 【結果】術後10年の疾患特異的-累積局所再発率はBCS群で1.2%, BT群で5.2%であり, BCS群とBT群で有意差を認めなかった(P=0.1129). 所属リンパ節再発を含めた疾患特異的-累積局所・所属リンパ節再発率はBCS群で3.5%, BT群で8.8%であり, BCS群で有意に再発が少なかった(P=0.0115). 遠隔転移再発を含めた術後10年の疾患特異的-累積無再発生存率は, BCS群で80.4%, BT群で74.3%であり, BCS群で有意に少なかったが(P=0.0235), 累積全生存率ではBCS群で87.6%, BT群で83.5%であり, 有意差を認めなかった(P=0.1446). 所属リンパ節再発を局所再発に含めた場合のBCS群の術後5年, 10年, 20年の疾患特異的-累積局所再発率は, それぞれ1.3%, 3.5%, 3.5%であり, Milan Trialと同等の成績であった. 病期別の疾患特異的-累積局所・所属リンパ節再発率, 疾患特異的-累積無再発生存率, 累積全生存率は, 日本乳癌学会の全国乳がん登録調査と同等の成績であった. 【結論】術後薬物療法および放射線治療を一連の治療と考えた上で術式を決定することで, 局所再発を抑制し良好な治療成績を得ることは可能である. 続きを見る
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土田, 純子 ; 長谷川, 美樹 ; 小山, 諭 ; 永橋, 昌幸 ; 利川, 千絵 ; 諸, 和樹 ; 小杉, 伸一 ; 若井, 俊文
出版情報: 新潟医学会雑誌 — 新潟医学会雑誌.  129  pp.331-336,  2015-06.  新潟医学会
本文リンク: http://hdl.handle.net/10191/44092
概要: 近年, マンモグラフィー検診の普及に伴い, 非触知乳癌の発見率が上昇してきている. 非触知乳癌の中には, 石灰化病変のみで発見される非浸潤性乳管癌(Ductal carcinoma in situ : DCIS)も多く含まれるが, 石灰化病 変を超音波検査で描出することは困難なことがあり, 手術に際し切除範囲の設定には苦慮することも多い. 臨床上, 実際に十分切除できているのか否かを術中に判断することは, その後の局所再発を防ぐ上で極めて重要である. 今回, 石灰化病変のみで発見された乳癌症例に対し, 術中に切除標本のマンモグラフィーを撮影し, 石灰化病変が切除できていることを確認できた症例を経験した. 症例は51歳, 女性. 検診マンモグラフィーで右乳房の石灰化を指摘され, ステレオガイド下マンモトーム生検を施行し乳癌と診断された. 超音波検査では石灰化病変の描出は困難であったが, マンモトーム生検時に留置したクリップ部位をマーキングし, 乳房温存手術を施行した. 術中に切除標本マンモグラフィーを施行し, ターゲットとした石灰化病変が切除できていることを確認して手術を終了した. 術後病理診断でも術前に予測した石灰化病変が完全に切除できていることを確認できた. 切除標本マンモグラフィーは, 簡便に石灰化病変の切除範囲の確認が可能な方法として有用であり, 文献的考察を加えて報告する. 続きを見る
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諸, 和樹 ; 若井, 俊文
出版情報: 新潟医学会雑誌 — 新潟医学会雑誌.  129  pp.245-255,  2015-05.  新潟医学会
本文リンク: http://hdl.handle.net/10191/44071
概要: センチネルリンパ節生検(sentinel node biopsy: SNB)は術前評価で原発巣T1-T2, かつ臨床的N0症例では標準手技となっている. センチネルリンパ節転移が陽性であった場合は, センチネルリンパ節以外の腋窩リンパ節(非 センチネルリンパ節)にも転移の危険があるため, 腋窩郭清を行うことが一般的な治療指針とされてきた. しかし近年, 欧米の大規模な前向き臨床試験の結果により, センチネルリンパ節転移個数が2個以下の場合や, センチネルリンパ節転移巣が2mm以下の微小転移の場合では腋窩郭清を省略しても, 郭清を行った場合と比較して予後に影響を与えないことから, 今後は腋窩郭清を省略する方向に向かうことが予想される. しかし, センチネルリンパ節転移個数が2個以下の場合に, センチネルリンパ節以外の腋窩リンパ節である非センチネルリンパ節に転移が無いのか, あるいは転移の危険が少ないのか, については完全に明らかにされてはいない. したがって, センチネルリンパ節転移個数が2個以下での腋窩郭清の省略の安全性も確実ではないと考えられる. 今回我々は, 乳癌センチネルリンパ節転移陽性例における, さまざまな臨床病理学的因子と非センチネルリンパ節転移の有無との関連について調べ, また, 乳癌センチネルリンパ節転移個数が非センチネルリンパ節転移を予測するのに有用であるか否かを検討した. 2010年~2013年の期間に当科でセンチネルリンパ節生検を行った浸潤性乳管癌症例のうち, センチネルリンパ節転移が陽性で腋窩郭清が施行され, 年齢, 腫瘍浸潤径, 核異型度, 脈管侵襲の有無, ホルモン受容体発現, Her2受容体発現, Ki-67標識率などの臨床病理学的因子の検索が全て施行されている症例を検討の対象とした. 非センチネルリンパ節転移と年齢, 腫瘍浸潤径, 核異型度, 脈管侵襲の有無, ホルモン受容体発現, Her2受容体発現, subtype 分類, Ki-67標識率などの臨床病理学的因子との関連を調べた. また, センチネルリンパ節摘出個数, センチネルリンパ節転移個数と非センチネルリンパ節転移との関連についても検討を行った. 統計学的解析は Mann-Whitney U 検定, カイ2乗検定, およびロジスティック回帰モデルによる多変量解析を用いた. 統計学的判定は p<0.05 を有意とした. 該当期間のセンチネルリンパ節生検施行症例は310例であり, そのうち309例でセンチネルリンパ節を同定することができた(同定率99.7%). センチネルリンパ節同定症例のうち46例(14.9%)がセンチネルリンパ節転移陽性であった.<br />腫瘍浸潤径の平均は, 全体で27.5±21.3mmであり, 非センチネルリンパ節転移陽性例では転移陰性例に比し有意差はないものの腫瘍径が大きい傾向があった(34.5±26.3mm vs 21.5±13.8mm; P=0.0603). 非センチネルリンパ節転移の有無は脈管侵襲(リンパ管侵襲・静脈侵襲)と有意な関連を認めたが(P=0.0274), 年齢, 核異型度, ホルモン受容体発現, Her2発現, subtype 分類, Ki-67標識率との関連は認められなかった. 摘出されたセンチネルリンパ節個数は2.9±1.7個(中央値3個)であり, 転移陽性センチネルリンパ節個数は1.5±0.8個(中央値1個)であった. センチネルリンパ節転移陽性46例の全例で腋窩リンパ節郭清が施行されたが, 非センチネルリンパ節転移陽性は21例, 転移陰性が25例であった. また, 郭清された非センチネルリンパ節個数は全体で13.3±2.2個(中央値12個)であり, 非センチネルリンパ節転移個数は3.2±5.2個(中央値1個)であった. 摘出されたセンチネルリンパ節個数は非センチネルリンパ節転移陰性例と陽性例で差を認めなかったが(2.8±1.7個 vs 3.0±1.0個; P=0.5571), 転移陽性センチネルリンパ節個数は非センチネルリンパ節転移陰性例に比し陽性例で有意に多かった(1.2±0.5個: 中央値1個 vs 1.8±1.7個: 中央値2個; P=0.0086). さらにセンチネルリンパ節転移個数2個以下と3個以上の2群について, 非センチネルリンパ節転移との関連を検討したが, 有意な関連は認めなかった. しかし, センチネルリンパ節転移個数1個以下と2個以上の2群で検討したところ, センチネルリンパ節転移個数が2個以上では有意に非センチネルリンパ節転移の割合が高かった. 単変量解析でセンチネルリンパ節転移の有無と有意な関連を認めた脈管侵襲, およびセンチネルリンパ節転移個数について, ロジスティック回帰モデルによる多変量解析を行った. センチネルリンパ節転移のリスクは, 脈管侵襲(LVI)では脈管侵襲ありが脈管侵襲なしに対しハザード比3.868(P=0.068, 95%信頼区間 0.905-16.531)であった. 一方, センチネルリンパ節転移個数ではセンチネルリンパ節転移個数2個以上では, 1個以下に対しハザード比4.845(P=0.030, 95%信頼区間 1.164-20.167)であり, センチネルリンパ節転移個数は非センチネルリンパ節転移の独立した予測因子であることが示された. 乳癌センチネルリンパ節生検において, 脈管侵襲とセンチネルリンパ節転移個数は非センチネルリンパ節転移の危険性を予測する因子であり, センチネルリンパ節転移陽性例では腋窩郭清を行うべきである. 続きを見る
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小山, 諭
出版情報: 新潟医学会雑誌 — 新潟医学会雑誌.  128  pp.343-351,  2014-08.  新潟医学会
本文リンク: http://hdl.handle.net/10191/43833
概要: 乳癌は従来, 欧米に比べ日本人では少ないとされていた. しかし近年では罹患率は急速に増加しており, 最新データでは日本人女性の乳癌の生涯リスクは7% (14人に1人)となっている. 乳癌の治療は, 大きく外科的治療(手術療法), 薬物療法, 放射線療法の3つに分けられるが, 症例ごとに乳癌の病期, 性質を考慮してこれらの治療法を組み合わせていく, いわゆる集学的治療が重要である. 今回は特に乳癌の外科的治療に焦点を絞って解説する. 乳癌に対する外科治療の歴史は正確にはわからないが, 紀元前1650年頃のパピルスに記録として残っている最古のものと考えられており, 乳房の腫瘍性病変を切開して排膿し残存腫瘍を焼却・腐敗させた内容が記されている. 古代から前近代においては乳癌の治療は焼却・腐食・切除が行われていたとされるが, 根治的効果は乏しく, 乳癌治療が発展するには近代まで待たなければならなかった. 17世紀に入ると癌腫を周囲組織を大きく付けて取ることと, 腫大した腋窩リンパ節を取ることが乳癌手術手技として確立された. しかし今日の乳房切除とは異なり不完全な切除であった. 19世紀に入ると麻酔法の発展を背景に, 乳癌の手術術式は腫瘍切除から乳房切除へと移っていき, さらに広範な皮膚切除や大胸筋筋膜切除も行われるようになった. しかし術後の再発, 特に局所再発の頻度は極めて高く, 高名な外科医でも乳癌術後の局所再発率は50~80%程度であった. その後, William Stewart Halstedは乳癌の再発は不完全な切除が主な原因と考え, 乳癌を完全に取り除くために乳房, 大胸筋, 小胸筋を一塊に切除し, さらにリンパ節を含め脂肪織ごと郭清を行うen bloc郭清を考案した. 彼の術式は定型的乳房切除術(radical mastectomy)と呼ばれ, 3年生存率42.3%, 局所再発率6%と, 当時としては驚異的に良好な成績を示したため1980年代後半まで日本でも広く行われていた. その後, 大胸筋を温存して乳房切除および腋窩リンパ節郭清を行う非定型乳房切除術が考案され, 治療成績は定型的乳房切除術手術と同等以上であるため現在でも行われている. さらに1943年には乳房部分切除でも適切な放射線療法を行えば5年生存率88%と乳房切除術に匹敵することが示され, 放射線治療の進歩に伴い乳房温存手術は全世界的に普及し, 現在, 我が国でも約6割の症例で乳房温存手術が行われている. また, 腋窩リンパ節郭清はリンパ浮腫・上腕の知覚鈍麻といった合併症リスクを伴う手技であるため, 近年はセンチネルリンパ節生検(sentinel lymph node biopsy: SLNB)という手技が確立し, 乳癌手術では標準術式となっている. 続きを見る
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辰田, 久美子 ; 若井, 俊文
出版情報: 新潟医学会雑誌 — 新潟医学会雑誌.  128  pp.205-215,  2014-05.  新潟医学会
本文リンク: http://hdl.handle.net/10191/43733
概要: センチネルリンパ節生検(sentinel node biopsy:SNB)は術前評価で原発巣T1-T2, かつ臨床的N0症例では標準手技となっている. これまでに腫瘍径, リンパ管または静脈侵襲, 核異型度, ホルモン受容体の有無, 年齢な どの臨床病理学的因子が用いられ, リンパ節転移予測因子として報告されてきている. さらに近年では, molecular subtypeも腋窩リンパ節転移予測に役立つと報告されてきている. 一方, 細胞増殖能の指標であるKi-67標識率は乳癌の予後因子として近年用いられているが, センチネルリンパ節転移との関連についてはこれまでに明らかにされていない. 今回我々は, さまざまな臨床病理学的因子, 及びKi-67標識率とセンチネルリンパ節転移の有無との関連について調べ, 乳癌におけるセンチネルリンパ節転移を予測するのに有用であるか否かを検討した. 2010年~2012年の期間に当科で手術を行った浸潤性乳管癌症例のうち, 年齢, 腫瘍浸潤径, 核異型度, 脈管侵襲の有無, ホルモン受容体発現, Her2受容体発現, などの臨床病理学的因子に加え, Ki-67標識率検索が全て施行されている症例を検討の対象とした. センチネルリンパ節転移と年齢, 腫瘍浸潤径, 核異型度, 脈管侵襲の有無, ホルモン受容体発現, Her2受容体発現, などの臨床病理学的因子との関連を調べた. さらにKi-67標識率とセンチネルリンパ節転移との関連についても検討した. 統計学的解析はMann-Whitney U検定, カイ2乗検定, およびロジスティック回帰モデルによる多変量解析を用いた. またKi-67標識率のカットオフ値はROC(Receiver Operating Characteristic curve)解析を用いた. 統計学的判定はP<0.05を有意とした. 対象例117例のうち22例(18.8%)にセンチネルリンパ節転移を認めた. センチネルリンパ節転移陽性例では有意に腫瘍径が大きく(P<0.0001), また, T2-T3症例ではT1症例に比し有意に転移陽性の割合が高かった(P=0.0086). さらにセンチネルリンパ節転移は脈管侵襲(リンパ管侵襲・静脈侵襲)と有意な関連を認めたが(P=0.0125), 核異型度やホルモン受容体発現, Her2発現, subtype分類との関連は認められなかった. Ki-67標識率はセンチネルリンパ節転移陽性例では転移陰性例に比し有意に低値であった(P=0.0331). ROC解析で求めたカットオフ値7.5%を用いた結果, Ki-67標識率高値群では低値群に比し有意にセンチネルリンパ節転移陽性の割合が少なかった(P=0.0197). T-因子, 脈管侵襲, およびKi-67標識率について多変量解析を行った結果, センチネルリンパ節転移のリスクは, T因子ではT2-3はT1に対しハザード比3.580(P=0.021, 95%信頼区間1.208-10.611), 脈管侵襲(LVI)では脈管侵襲ありが脈管侵襲なしに対しハザード比4.976(P=0.041, 95%信頼区間1.069-23.159)であった. また, Ki-67標識率では低値群が高値群に対しハザード比4.051(P=0.016, 95%信頼区間1.302-12.602)であった. 以上のことから, T因子, 脈管侵襲, およびKi-67標識率の3つの因子はセンチネルリンパ節転移の独立した予測因子であることが示された. 乳癌センチネルリンパ節生検において, 腫瘍径や脈管侵襲はセンチネルリンパ節転移の危険性を予測する因子であるが, Ki-67標識率も独立したセンチネルリンパ節転移予測因子となり得る. 続きを見る
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飛澤, 泰友 ; 佐藤, 孝道 ; 笹原, 資太郎 ; 齋藤, 利香 ; 柴田, 実
出版情報: 新潟医学会雑誌 — 新潟医学会雑誌.  127  pp.141-152,  2013-03.  新潟医学会
本文リンク: http://hdl.handle.net/10191/35915
概要: 【目的】乳癌の術後照射による放射線潰瘍は骨髄炎等を合併していることが多いため, 保存的治療による回復は極めて困難となる. 外科的治療を選択した場合は, 適切なデブリードマンと血行の豊富な自己組織による被覆が原則となる. 晩期障害として発症し た乳癌術後放射線潰瘍の治療を経験したので報告する. 【対象】放射線照射後20年以上を経過して発症し, 2006年10月以降に治療を施行した3例である. 【結果】年齢は平均65.3歳, 照射後発症までの年数は平均28.7年, 再建術後経過観察期間は平均4年6ヵ月であった. 再建に用いた組織は同側の広背筋皮弁が2例, 反対側の大胸筋皮弁が1例であった. 【考察】放射線照射による晩期障害は難治性の潰瘍となりやすく, 照射後数十年経過して発症することも稀ではない. 局所は創傷治癒機序が正常に働かないため, 容易に感染を併発し深部に進行する. 自験例は全例とも過去にHalsted法を施行されており, 発症の要因としては胸筋の合併切除による胸壁の菲薄化, 当時の照射方法や照射器具などが現在とは異なる状況であったと推測されることが挙げられる. 診断に際しては, 二次発癌の報告もあることから悪性腫瘍を念頭におくべきであり, 疑われれば生検も考慮すべきである. デブリードマンの範囲の決定にはしばしば難渋するが, 術前の画像診断は必須である. 術中の肉眼所見も重要であり, 皮膚は潰瘍部のみではなく色素沈着や脱失, 毛細血管拡張部も含めその外側で, 胸骨や肋骨は断端が肉眼的に正常と判断できるまで切除することが肝要である. 再建方法に関しては, 血行の豊富な有茎弁が第1選択となる. 欠損の大きさや各種栄養血管の状態を踏まえたうえで, 使用する組織を適宜選択することが重要である. 胸壁の全層欠損では, 硬性胸壁再建の要否が問題となる. 自験例では全例硬性胸壁再建を施行していないが, 術後に持続する胸郭動揺を呈した症例はない. 術中所見として, 放射線照射によると思われる壁側胸膜の肥厚や周囲組織の線維化を認めており, それらの硬化した組織により胸郭の支持性が保持されたと推測する. 【結論】晩期障害である乳癌術後放射線潰瘍は, 適切な治療により患者のQOLが高まることは明らかである. 保存的治療の限界や, 悪性腫瘍の可能性を認識しながら診断・治療にあたることが重要と考える. 続きを見る